獣医師による手作り食・自然療法ガイド

スピルリナ vs. クロレラ うちの犬猫にはどっちを選ぶ?

人間用の健康食品として人気のスピルリナクロレラは犬や猫にもうれしい利点がいっぱい。比較的安く購入できるので、特徴と違いを知って毎日の健康管理に活かしましょう。

スピルリナとクロレラ 徹底比較

スピルリナクロレラも微細藻類の一種に分類され、どちらも乾燥させた緑色の粉末や錠剤として販売されています。光合成によってシンプルな物質からタンパク質や脂肪、炭水化物を短時間で大量に作り出すことができるため、環境に優しい機能性食品としてたくさんの研究が行われてきました。

共通点としては、ビタミンやミネラル、カロテノイド、多糖類、脂肪酸などの栄養素が豊富なこと。ただしこれらの栄養素の含量は製造方法によって大きく異なってくるため、特定のビタミンやミネラルの補給を目的として使用する場合は、メーカーの分析値を確認する必要があります。

いずれも抗酸化抗炎症免疫力アップ解毒口臭の改善肝臓のサポート貧血の改善など、幅広い効果が人や動物の研究から報告されていることも特徴です。犬や猫では全般的な健康状態の維持、疾患時・疾患からの回復期の栄養補給、関節炎をはじめとする「○○炎」とつく病気の治療補助に昔からよく使われてきました。

両者の大きな違いは、スピルリナクロレラよりもはるか大昔に発生した原核生物で、細胞壁を持っていないのに対し、クロレラは細胞壁を持ち、より進化した植物に近い構造を持っていることです。犬猫は植物の細胞壁を上手に消化することができないため、クロレラを選ぶ際には細胞壁の破砕処理または発酵処理をしているものを選ぶ必要があります。

スピルリナ

藍藻の一種。らせん状の単細胞で細胞壁がない [1]。
  • 蛋白質:55〜70%。タウリン以外の必須アミノ酸をすべて含む。メーカーの説明書では蛋白質含量60〜70%と高めの場合が多い。
  • 炭水化物:8〜19%
  • 脂質:4〜9%。リノール酸、リノレン酸が主で、DHA、EPAアラキドン酸をごくわずかに含む。
  • 食物繊維3〜7%
  • ビタミンA、B群、C、Eのすべてを含む。
  • ミネラル必須ミネラルをすべて含む。
  • 色素・カロテノイド:クロロフィルa・b、フィコシアニン、キサントフィル、ベータカロテン、ゼアキサンチン、カンタキサンチンなど

  • 細胞壁がないため消化吸収されやすい
  • 蛋白質の割合が高く吸収率が良い
  • 抗炎症・抗酸化・抗関節炎・抗腫瘍・肝保護などの効果が報告されているフィコシアニンを含む
  • ヒ素や重金属などの有害物を吸着するキレート効果がある

日常の健康管理・病気予防に

気力や体力が衰える高齢期の健康維持に

手作り食やペットフードで不足しがちな栄養素を補う

  • イムリナが自然免疫力をアップ
  • 抗酸化抗炎症作用でさまざまな臓器をダメージから守る

肝疾患

 
  • 抗炎症効果やフリーラジカル除去作用により肝臓の損傷を防ぐ
  • 人を対象にした無作為化二重盲検プラセボ対照試験で肝酵素(ASTとALT)を低下させることが示されている

関節炎(変形性関節症)などの炎症性疾患

  • フィコシアニンが非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)のようにCOX-2を阻害することがインビトロ試験で示されている
  • 人を対象にした無作為化二重盲検プラセボ対照試験で慢性疼痛に効果があることが示されている

腫瘍・がん

  • フィコシアニンは細胞周期の阻害、COX-2阻害などの機序を介してさまざまな種類の腫瘍細胞の増殖を抑えることがインビトロ試験で報告されている
  • 抗がん剤や放射線治療による副作用を緩和することがマウス・イヌ・ラットで示されている

  • 潤して熱を冷ます
  • 気血を補う
  • 脾・腎・肺を養う

  • 犬:フード1カップあたり小さじ1/4(0.6 g)を目安
  • 猫:1頭あたり小さじ1/8かそれより少ない量から始める
  • 疾患の治療補助の場合:上記の量から開始して少しずつ増やしていく

クロレラ

緑藻の一種。球形で細胞壁のある単細胞[2]

  • 蛋白質:51〜58%。スピルリナよりやや低め。タウリン以外の必須アミノ酸をすべて含む。
  • 炭水化物:12〜17%
  • 脂質:14〜22%。スピルリナより高め。リノール酸、リノレン酸が主で、DHA、EPAアラキドン酸をごくわずかに含む。
  • 食物繊維12%。スピルリナより多い。
  • ビタミンA、B群、C、Eのすべてを含む。
  • ミネラル:必須ミネラルをすべて含む。
  • 色素・カロテノイド:クロロフィルa・b、ベータカロテン、ルテイン、カンタキサンチン、アスタキサンチンなど

  • 細胞壁が消化の邪魔をするため、破砕処理・発酵処理しているものを選ぶ
  • スピルリナよりもクロロフィル・食物繊維の量が多い
  • クロレラ成長因子が損傷した組織の治癒を促進
  • 水銀など腸内の有毒物を吸収して排泄
  • ナトリウムやカリウムの量がスピルリナより少ないことが多い

日常の健康管理・病気予防に

気力や体力が衰える高齢期の健康維持に

手作り食やペットフードで不足しがちな栄養素を補う

  • 抗酸化抗炎症作用でさまざまな臓器をダメージから守る
  • 体脂肪血糖値を下げて、肥満・代謝性疾患を防止

デトックス

  • ワクチンのアジュバント、食品中に含まれていた重金属などの除去に
  • 食物繊維が腸を掃除

糖尿病

  • インスリン抵抗性を抑制
  • インスリン分泌細胞を保護

  • 潤すが、冷やしすぎない
  • 風湿を取り去る
  • 精気血津液を補う

  • 犬:フード1カップあたり小さじ1/4(0.6 g)を目安
  • 猫:1頭あたり小さじ1/8かそれより少ない量から始める
  • 疾患の治療補助の場合:上記の量から開始して少しずつ増やしていく

スピルリナを朝ご飯に、クロレラを夜ご飯に混ぜるのがオススメ!
朝は消化しやすいスピルリナで1日の活力を維持、夜はクロレラでデトックス&整腸効果を促します。

注意点

  • スピルリナクロレラも有毒物による汚染やアレルギーなどの健康被害が報告されているため、信頼のできるメーカーから購入する。
  • 湖や海など自然の状態で製造したものは汚染されている可能性があるため、管理された施設で培養されたものを選ぶ。
  • クロレラは細胞壁を破砕処理したものを選ぶと栄養素が吸収されやすくなるが、破砕処理の際にビタミンなどの重要な栄養素も壊れる場合がある。そのため、発酵などにより細胞壁を薄くしたものも販売されている。
  • 錠剤には賦形剤 が使用されていることがあるので、無添加のものを選ぶか、粉末のものを選ぶ。
  • いずれもキレート作用があるため、与えすぎると食物中のミネラルの吸収を阻害する可能性がある。
  • スピルリナはミクロシスチンという有毒物も産生。この量がきちんと制限されているものを選び、過剰に与えすぎないこと(特に子猫・子犬)。
  • スピルリナクロレラも核酸(DNA・RNA)が豊富。核酸の一部は尿酸に変換されるため、尿酸尿石などの既往がある場合は注意が必要(特にダルメシアン)。
  • ビタミンKの濃度が高いものは、ワルファリン治療中には使用しない。
  • 緑色の色素がカーペットを汚すので、ごはんを食べ散らかす癖のある子は要注意。錠剤やカプセルのものを選ぶとよい。

 

  スピルリナ クロレラ 単位
カロリー 290〜380 343〜410 kcal
蛋白質 50〜75 50〜60 %
炭水化物 6〜20 12〜17 %
脂質 9〜14 14〜22 %
核酸 4 3.3〜10 %
食物繊維 3〜7 12〜14 %
ナトリウム 360〜1000 30〜150 mg
カリウム 1000〜1300 600〜930 mg
カルシウム 120〜450 48〜345 mg
マグネシウム 195〜320 10〜315 mg
リン 118〜960 900〜1200 mg
28〜87 57〜130 mg
亜鉛 1.5〜4.7 2.2〜3.9 mg
0.5〜6.1 0.3〜0.8 mg
マンガン 1.9〜3.3 4〜20 mg
ヨウ素 140〜1400 10〜600 µg
セレン 1〜30 200〜7000 µg
ベータカロテン 570〜352,000 > 10,000 IU
ビタミンD ごく少量 ごく少量 µg
ビタミンE 5〜30 1.5〜5 mg
ビタミンK 25〜1000 0〜900 µg
ビタミンB1 2.3〜3.3 0.3〜1.4 mg
ビタミンB2 1.2〜4.5 1.3〜4.3 mg
ビタミンB3 12.8〜17 13〜24 mg
ビタミンB6 0.4〜0.9 0.5〜1.4 mg
ビタミンB12 100〜200 50〜100 µg
葉酸 94 94〜2300 µg
パントテン酸 3.5 1.1〜2.6 mg
ビオチン 0.5 32〜190 µg
ビタミンC 10.1 10〜20 mg
コレステロール < 0.1 < 0.1 mg
オメガ3脂肪酸 少量 少量 g
オメガ6脂肪酸 1〜3 3〜10 g
コリン 66 200 mg
  • 分析値はメーカーによって大きく異なります。
  • スピルリナ由来のビタミンB12は動物の体内では生理活性がありません。
  • 猫は海藻由来のベータカロテンをビタミンAに変換することができません。
  1. Nicoletti M. Microalgae Nutraceuticals. Foods. 2016 Aug 22;5(3). pii: E54. doi: 10.3390/foods5030054. Review. PubMed PMID: 28231149; PubMed Central PMCID: PMC5302390.
  2. Wells ML, Potin P, Craigie JS, Raven JA, Merchant SS, Helliwell KE, Smith AG, Camire ME, Brawley SH. Algae as nutritional and functional food sources: revisiting our understanding. J Appl Phycol. 2017;29(2):949-982. doi:10.1007/s10811-016-0974-5. Review. PubMed PMID: 28458464; PubMed Central PMCID: PMC5387034.
  3. Buono S, Langellotti AL, Martello A, Rinna F, Fogliano V. Functional ingredients from microalgae. Food Funct. 2014 Aug;5(8):1669-85. doi: 10.1039/c4fo00125g. Review. PubMed PMID: 24957182.
  4. Becker EW. Micro-algae as a source of protein. Biotechnol Adv. 2007 Mar-Apr;25(2):207-10. Epub 2006 Nov 23. Review. PubMed PMID: 17196357.
  5. Habib MAB, Parvin M, Huntington TC, Hasan MR. A Review on Culture, Production and Use of Spirulina as Food for Humans and Feeds for Domestic Animals and Fish. Food and Agriculture Organization of the United Nations; Rome, Italy: 2008.
  6. 米国農務省食品成分データベース
  7. Bertoldi FC, Sant’anna E, Oliveira JLB. Chlorophyll content and mineral profile in the microalgae Chlorella vulgaris cultivated in hydroponic wastewater. Cienc. Rural. 2008;38:54–58. doi: 10.1590/S0103-84782008000100009.
  8. Ley BM. Chlorella: The Ultimate Green Food: Nature’s Richest Source of Chlorophyll, DNA & RNA; A Health Learning Handbook. 2003. Bl Publications, Detroit Lakes, MN.
  9. Reddy CM, Bhat VB, Kiranmai G, Reddy MN, Reddanna P, Madyastha KM. Selective inhibition of cyclooxygenase-2 by C-phycocyanin, a biliprotein from Spirulina platensis. Biochem Biophys Res Commun. 2000 Nov 2;277(3):599-603. PubMed PMID: 11062000.
  10. Jensen GS, Drapeau C, Lenninger M, Benson KF. Clinical Safety of a High Dose of Phycocyanin-Enriched Aqueous Extract from Arthrospira (Spirulina) platensis: Results from a Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study with a Focus on Anticoagulant Activity and Platelet Activation. J Med Food. 2016 Jul;19(7):645-53. doi: 10.1089/jmf.2015.0143.
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