漢方医学の考え方を毎日の健康管理に生かす
性格と体質が非常に深い関わりを持っていることは、みなさんご自身の経験からも実感されていることでしょう。これは犬や猫でも同じ。愛犬や愛猫の性格や行動を観察することで、自分の犬猫についてより深く知り、隠れた体質や傾向を探ることができます。
私たちは、診療に訪れる犬や猫の性質を理解するために犬猫を「木・火・土・金・水」の5つのタイプに大きくわけ、治療方針の決定や予防医療に役立てています。これは占いの一種ではなく、生命や自然、社会の事象について何百年にもわたって観察して得られた知識を体系化した五行説という漢方医学(中医学)のコンセプトに基づくものです。
人や動物の行動、性格、社会や自然との関わりあい方、起こしやすい症状や病気などには一定の傾向やパターンがあります。例えば、同じようなストレスを経験しても、行動問題を起こす犬猫もいれば(火・木タイプ)、下痢や嘔吐(土タイプ)を起こす子もいます。場合によっては引きこもりがちになったり(水・金タイプ)、逆にまったく気にしない子もいますよね(木・金タイプ)。症状についても、目(木タイプ)、心臓(火タイプ)、胃腸(土タイプ)、呼吸器・皮膚(金タイプ)、関節(水タイプ)など現れやすい部位が一頭一頭異なります。
このような現代医学ではまだ説明ができず、検査方法もない「体質」や「傾向」の違いを五行説にあてはめてパターン解析することで、どのような環境を整えれば自分の犬猫が精神的にも身体的にも健やかで幸せな生活を送れるのかが見えてきます。
5つのタイプ
五行説とは、自然界のありとあらゆる現象が「木」「火」「土」「金」「水」という互いに影響し合う5種類のエレメンツから構成されており、これらのエレメンツの相互作用や盛衰によって自然界の仕組みや循環が生まれるという考え方で、陰陽説とともに現代漢方医学の骨格をなしています。
青い矢印は次に来る要素を順送りに生み出し支えていく「相生」の関係、黄色の矢印はその先にある要素を抑制することで拮抗関係を保つ「相剋」の関係。それぞれの要素はそれだけでは成立せず、他の要素との力関係を保つことで成り立っている。
私たちや犬猫たちの本質も5つのエレメンツのいずれかに属しており、季節などの自然現象や体の中の臓器にもそれぞれエレメンツが割り当てられています。例えば、「木」は春の成長・発育・再生を象徴しています。このタイプに当てはまるのは、草木が芽吹くときのような若い力にあふれた活発で恐れを知らない精神。臓器でいうと、全身に血液やエネルギーを送り出す重要な役割を果たしている肝臓がこのタイプに属しています。「火」は文字通り熱い炎と夏を象徴。このタイプに属する犬猫は炎のように光り輝く魅力と、ゆらめきやすい性格を合わせ持っています。
この生まれ持った基本の性質は変わることはありませんが、食事、周囲の環境、季節などの影響を受けて強くなったり弱くなったりします。自分の性質が本来のバランスを失うと、青い矢印でつながっている前後のエレメンツの性質が現れたり、黄色の矢印でつがっている対角線上の2つのエレメンツとの拮抗関係が崩れ、これらのエレメンツに属する臓器に症状が現れます。
毎日を健康で幸せに過ごすには、それぞれのエレメンツに合った環境や苦手な環境を理解し、本来のバランスを保つことが重要です。
例えば土タイプの犬猫は、のんびり屋で人や動物が大好き。「土」というよりは大地を表す「地」と表現するのがぴったりな、おおらかな性格です。このタイプは、人や動物との交流に幸せを感じるので、こういった機会を増やしてあげることで満ち足りた毎日を送ることができます。その一方で、大地のようになんでも吸収してしまうため、周囲の環境にとても敏感です。家庭内の不和、雷や留守番など、精神的に落ち着かない状況になると、そそうをしたり、お腹を壊したりする傾向にあります。家具をかじったりひっかいたり、クッションを引きちぎったりといった衝動的な行動が止められなくなる子もこのタイプに多くいます。
こういった好ましくない性質が強く出ている子には、黄色の矢印線上にある、土タイプを抑える「木」の要素(活動的に動く)と土タイプに抑えられダメージを受けやすい「水」の要素(一人で過ごす訓練をする)を日常管理に取り入れることでバランスをとります。
さて、みなさんの犬猫はどのタイプに当てはまるでしょうか。それぞれの特徴をまとめたのでチェックしてみてください。
診断はこちらで
犬と猫の体質診断
よくある品種:
ボーダーコリー、ラブラドールレトリバー
アビシニアン
なりやすい病気・好発部位:
アレルギー、鼻炎、目・爪・神経系・筋肉(前躯)
弱点:
風、退屈で単調な生活
対策:
知的玩具、競技会、オビディエンス訓練、筋肉をリラックスさせるマッサージなど
よくある品種:
トイプードル、ダックス、ヨーキー、シャム
なりやすい病気・好発部位:
心臓病、分離不安、腎臓病、前躯
弱点:
暑さ、無視されること、留守番
対策:
ストレス対策が第一、涼しい環境、夏はローフード
よくある品種:
ゴールデン/ラブラドールレトリバー
メインクーン、ラグドール、スコティッシュフォールド
なりやすい病気・好発部位:
肥満、代謝疾患、分離不安、消化器、関節、下腹部
弱点:
湿気、飼い主のストレス、競争・対立
対策:
体重管理、ストレス対策、温かい食事
セラピー犬 /猫に向いている
よくある品種:
グレイハウンド、ウィペット、ソマリ
なりやすい病気・好発部位:
貧血、便秘、呼吸器、皮膚、鼻、粘膜
弱点:
乾燥、別離、環境の変化
対策:
いつも同じ環境や習慣を維持、湿度を保つ
食物繊維、知育玩具、グリーフケア
よくある品種:
ジャーマンシェパード
なりやすい病気・影響を受けやすい部位:
恐怖症、脊髄疾患、冷え、関節、聴覚、後躯
弱点:
寒さ、恐怖症
対策:
社会化訓練、叱らない
独りで落ち着ける場所、温かい食事
集計結果発表 日本の犬猫に多いのはどのタイプ?
本サイトの体質診断コーナーでの診断結果を集計しました。
犬(約2500頭)
猫(約2300頭)
(2017年9月現在)
現在のところ、犬猫ともに、やっかいな性格の「火タイプ」が一番多く、手のかからない「金タイプ」が一番少ないという結果になっています。火タイプの子は、甘えっ子で可愛らしい子が多い反面、感情の起伏が激しく、それが心臓-腎臓系や自律神経系に負担をかける傾向にあるのが特徴です。このタイプの子を上手に管理するコツは、拮抗関係にある水の要素(独りで過ごすことを覚える・水分補給を心がける・冷やして潤す食材を取り入れるなど)と金の要素(規則正しい生活を送る)を取り入れることです。
みなさんの犬猫はどのタイプに当てはまりましたか?ご自分の愛犬や愛猫の体質を知って、ぜひ毎日の健康管理に取り入れてみてくださいね。毎日の小さな積み重ねが数年後には大きな違いになって現れるでしょう。
- Beinfield H & Korngold E. Who Am I? Five Phase Types. Chinese Medicine Works 2007.