獣医師による手作り食・自然療法ガイド

絶食のススメ

病気の8割は腸から始まる・・・これは犬猫でも同じです。腸は栄養の消化吸収や老廃物の排泄以外にも病原菌や毒素から体を守るために24時間働き続けています

絶食して腸を休めることで、自己修復を促し、体内に蓄積している老廃物や炎症性物質を一掃することができます。新たな物質が入ってこないため、解毒器官である肝臓や腎臓も休むことができます。

野生時代の犬猫は、1日2食きっちりと時間通りに食べていたわけではありません。1〜2日に1回、必要なときに狩りをし、獲物が見つからないときはもっと長い時間食べることができないときもあったでしょう。人に飼育され、ペットフードを与えられるようになってから今のような飽食状態に適応させられてきたわけですが、適応しきれていないために肥満や食物アレルギー、糖尿病、そのほかの不調を抱えた犬猫で動物病院があふれかえった状態になっています。

絶食は働きすぎの胃腸や内臓を休ませてくれる一番の自然療法です。

絶食の方法

  1. 月1回〜週1回、夕飯を抜くだけ。
  2. 固形物は一切与えず、代わりにボーンスープや肉・魚のゆで汁、デトックスジュースなどを与えて、水分をたっぷり摂取させます。サプリメントもお休みしましょう。
  3. 翌日の朝食は、いつもより少なめに小さく切った温かい食事を与えます。がっつきやすい子は、2〜3回に分けて少しずつ与えるとよいでしょう。
  4. 夕食からいつもどおりの食事に戻します。

 

重度の炎症性疾患では獣医師の判断により数日間絶食を続けることがありますが、通常は月1回〜週1回の定期的な絶食で十分な効果が得られます。

癒しのボーンスープ グリーンデトックスジュース

絶食はかわいそう?

大好きなごはんを1晩でも我慢させるなんて…と考える方は、自分も一緒にごはんを抜いてみませんか?初回はちょっとひもじい思いをするかもしれませんが、何回か行ううちに慣れてきて、絶食後は体が軽く頭もスッキリして仕事がはかどることに気づくと思います。これと同じことが愛犬や愛猫でも起こっています。

空腹が我慢できない方は、犬猫と一緒にボーンスープやデトックスジュースを飲み、何も考えずに一緒に早く寝てしまいましょう。テレビやパソコン、スマホで疲れた目や脳もたまには休息が必要です。

絶食の翌朝はスムージーやおかゆなど、消化の負担にならないものを摂り、昼食からいつもどおりに戻します。

気をつけたいのは調子がいいからといってあまり頻繁に絶食を行わないことです。体が食べないことに慣れすぎて、消化機能や代謝機能が鈍ることがあります。犬猫も人も月1回〜週1回なら安全です。

絶食がすすめられる犬猫

  • 健康な犬猫。炎症や老廃物がたまらないよう予防的に行います。
  • 疾患の初期。体に溜まった不要なものを取り除くことで、体が治癒に専念できるように。
  • 下痢、軟便気味のとき。ダメージを受けた腸管粘膜や腸内細菌叢も一緒に排泄されてしまうため、ここに食物を入れてしまうと、腸管は自己修復ではなく消化吸収にエネルギーを費やさなければならず、ダメージが悪化します。
  • 食物アレルギーなどのアレルギー性疾患。腸管の免疫組織は全身の免疫系の70〜80%を占めています。腸管免疫系を正常化することは、全身の免疫バランスの回復にも役立ちます。
  • 膀胱炎、関節炎、外耳炎などの炎症性疾患がある犬猫。体に合わない食事の食べ過ぎが原因になっていることがよくあります。
  • 食の好みが激しい犬猫で食事の切り替えが必要なとき。お腹が空いていれば選り好みをする余裕がなくなり、切り替えやすくなります。
健康バランスの鍵!腸の修復ガイド

絶食してはいけない犬猫

病気の犬猫でも手術や検査のために12〜24時間絶食状態になることはよくあります。水和状態さえ維持できていれば特に問題なく回復しますが、次の場合は注意が必要です。

  • ずっとペットフードを食べていて肥満気味の猫。24時間以上絶食状態が続くと脂肪肝になる危険性が高くなります。
  • もともと食が細い犬猫。普段から腸管や内臓を酷使することがないため、絶食する必要はありません。
  • 食欲不振があり、体力が落ちている犬猫。なんらかの病気が隠れているため、その原因がわかってから絶食が適しているか判断する必要があります。
  • 抗生物質治療を必要とする感染症がある場合。
  • 糖尿病などの代謝性疾患や内分泌系疾患があり、一定量の食事の摂取が必要な犬猫。
  • がん、腎臓病、肝臓病などの疾患の末期で消耗状態または悪液質の状態に陥っている犬猫。

自分で判断できない場合は、かかりつけ医に1晩絶食してもよいか確認してもらうと安心です。絶食は行っても、絶水は行わないことも大切です。