カロテノイド、ポリフェノール、食物繊維、ビタミンCなど、さまざまな抗酸化・抗炎症作用がある成分を含む野菜や果物。積極的な病気予防のためにぜひ毎日の食事に取り入れてもらいたい食材です。
基本的には、猫ちゃんは野菜の繊維を分解する消化酵素を持っておらず、盲腸も退化しているため繊維を消化してくれる腸内細菌もあまりいません。野菜の栄養分をきちんと吸収してもらうには、ミキサーで混ぜてピューレやペーストにするのがおすすめです。軽くゆでてみじん切りにしたり、すりおろしてもいいでしょう。便秘しやすい子には、そのまま与えても構いません。
それに比べると、わんちゃんはもっと柔軟性があり、野菜に対する反応が一頭一頭で異なります。野菜や果物をそのまま与えてもきちんと消化吸収できる子もいれば、そのままうんちに出てきたり、下痢する子もいます。おもしろいことに一緒に生まれた兄弟姉妹でも反応が異なることがあるので、それぞれに最適な方法を探してあげるのがおすすめです。もちろん、両方を取り入れてもOK。
抱えている病気がある場合は、それぞれの利点と欠点を知っておくと病気の管理に役立ちます。
うんちの健康度チェッカーカット野菜・果物の利点と欠点
利点
欠点
野菜・果物ペーストの利点と欠点
利点
- 抗酸化成分や抗炎症成分、ビタミンなどの栄養素が吸収されやすくなる。
- 消化の負担になりにくく、胃腸を休ませることができる。
- ウンチの量が減り、硬くなる。
- カット野菜と比べると1/3〜1/4のボリューム。食が細い子にも与えやすい。
欠点
- 糖分が多い食材の場合、糖分が吸収されやすくなり、食後の血糖値が上昇してインスリン抵抗性を起こしやすくなる。
- 一度ミキサーにかけると新鮮さがどんどん失われていくので、作り置きが難しい。2〜3日中に使い切るか、冷凍保存する必要がある。
- 消化管の蠕動運動が鈍り、便秘になることがある。
症例紹介
今回、紹介するのは10歳のトイプードルの男の子。食物アレルギーをきっかけに穀類をやめ、肉魚を中心に野菜や果物を加えた手作り食に切り替えてから3年。アレルギーの再発もなく、良好な健康状態で過ごしていました。
ある日のこと、飼い主さんが「犬猫は野菜の消化が苦手で消化器系の負担になる」というネット記事を発見。そこで紹介されていた野菜をペーストにして与えるという方法をさっそく試してみたのです。すると、どちらかというと柔らかめだったウンチがしっかりと固まるようになり、飼い主さんは大喜び。健康診断の時にとても嬉しそうに報告してくれました。
ところが1〜2ヶ月ほどたった頃から早朝に吐くように。前にアレルギーを起こした時にも同じような症状がみられたので、飼い主さんはまず除去食を実施。食材を一つずつ調べていきましたが、原因はなかなか見つかりませんでした。その間にも嘔吐の回数は少しずつ増え、ほぼ毎日起こるように。
次の健康診断で来院した時には体重が1割ほど減っていました。でも、血液検査や尿検査では嘔吐の原因になる異常は特に見つからず、食物アレルギーの検査結果も前回と同じ。脈は正常でしたが、舌の色が以前より薄く青みがかっていました。「気虚」のサインです。嘔吐は必ず早朝に起こるため、犬よりも飼い主さんの方が寝不足で調子が悪そうでした。嘔吐物は、ほぼ透明な胃液で、たいていは消化されていない小さな肉の塊が入っています。
胃腸の気虚(機能低下)に効果のある「補中益気湯」を処方したところ、嘔吐はやみましたが、服用をやめるとまた始まります。未消化物が混ざった早朝(食後8〜12時間後)の嘔吐にはいろいろな原因が考えられますが、胃の内容物の排出停滞もその理由の一つです。そこで、食物繊維の中でも食物の胃腸通過時間を早める効果のある不溶性繊維(セロリや根菜などの繊維質の多い野菜)を食事に足すことを提案してみました。飼い主さんはせっかくウンチが硬くなったのに…と反論しつつも夜ごはんだけセロリやブロッコリーの茎、アスパラの根元などを加えてくれました。
すると翌朝から嘔吐がピタリとなくなり、飼い主さんから大興奮で電話がかかってきました。その後、飼い主さんは、そのまま与えると食べ残しやすいセロリや葉物野菜、パセリ、人参などをペーストにし、ブロッコリーやアスパラ、果物はそのまま与えるという軟便も嘔吐も起こさない愛犬にベストなバランスを見つけ、それを継続しています。
犬と猫はもともと肉食動物だったため、理論的には野菜をミキサーで混ぜて細胞壁を壊した方が消化しやすくなるはずです。しかし、動物の消化活動と栄養素の関係はそれほど単純なものではなく、まさに十頭十色。このように思わぬところで障害を起こすことがあります。犬猫自身の消化力だけでなく、腸内細菌の種類や数、腸の長さなどに個体差があるためです。
どの方法が正しいかではなく、愛犬・愛猫に合っているかを基準に一頭一頭の様子を観察しながら最適な方法を選んであげてくださいね。
食物繊維 (プレバイオティクス)野菜を消化しやすくするそのほかの方法
冷凍する
野菜を一度冷凍してから解凍するとしんなりすることがありますよね。細胞壁や細胞膜が壊れた証拠です。ただし、切ってから冷凍すると酸化(冷凍焼け)しやすい野菜もあるので注意しましょう。
発酵させる
善玉菌を使って発酵させると、善玉菌が食物繊維を消化してくれます。
無塩発酵野菜の作り方