獣医師による手作り食・自然療法ガイド

鉢植えで育てる家庭常備薬(2)

ハーブを育てるのは犬や猫を育てるのに似ていますね。放っておいても育つものもあれば、ちょっとしたコツや上手な管理が必要なものもあります。大切に育てた植物はパワーもいっぱい。自然の持つ力を愛犬や愛猫の健康管理に存分に生かして、循環させましょう。初心者の方でも比較的簡単に育てることができる薬用ハーブを集めました。

鉢植えで育てる家庭常備薬(1)

カレンデュラ(Calendula officinalis

鮮やかな黄色〜オレンジ色の花を咲かせるカレンデュラ(トウキンセンカ)。犬と猫のスキンケアに欠かせないハーブです。

庭に植えておくと毎年勝手に育って花を咲かせてくれますが、日当たりさえよければ室内の鉢植えでもよく育ち、インテリアとしても毎日の生活を華やかにしてくれます。

開いた花を順番に収穫し、直射日光を避けた場所で乾燥させてから使います。ある程度たまったらハーブティーにしたり、バームやクリーム作りに挑戦しましょう。

一番手軽な使い方はハーブティー。小さじ1〜2杯に熱湯1カップを加え15分ほど置きます。薬浴剤や湿布、アイマスク、スプレーとして使うことができます。もちろん飲んでもOK。

  • 薬浴剤:お湯をはったバスタブやシンクに加えて。さまざまな理由によるかゆみや皮膚の炎症の抑制に役立ちます。ネットに入れて直接浴槽に浸すと、人用の入浴剤にもなりますね。
  • 湿布・アイマスク:冷ましてからコットンや布に浸して患部に当てます。湿疹、ホットスポット、結膜炎、赤く腫れた外傷などに。
  • スプレー:患部の洗浄に。数日中に使い切るようにしましょう。
  • 内服:体重 10 kg あたり1/4〜1/2カップを数回に分けて。そのまま飲ませても、食事や水に混ぜることもできます。
カレンデュラ軟膏の作り方

薬膳効果(内用)
  • 浄化

生化学作用(外用)
  • 抗炎症
  • 抗菌(細菌・真菌)
  • 皮膚の修復

ジャーマン・カモミール(Matricaria chamomilla

背の高い植物なので、少し大きめの鉢植えがおすすめです。ベランダや庭の方が育てやすいですが、室内でも日当たりと水はけに気をつければ十分育ち、香りを楽しむことができます。

カレンデュラと同じように開いた花から収穫していき、乾燥させてから保存します。

外用薬としては、鎮静作用が高く、カレンデュラよりもマイルドな抗菌・抗炎症作用があります。小さじ2〜5に熱湯1カップを注いで15〜30分置き、薬浴剤、アイマスク、湿布、スプレーにします。カレンデュラと混ぜるとかゆみを抑える効果が高くなります。

内服では、抗不安作用があり、ストレスによる軽度の下痢に効果があります。特に水タイプの怖がりさんにおすすめ。外用と同じようにハーブティーを作り、体重10 kg あたり1日1/4〜1/2カップを目安に与えます。そのまま飲ませても、食事に加えてもかまいません。

薬膳効果(内用)
  • 抗不安・鎮静作用
  • 軽度の下痢を改善
  • 利胆
  • 温める

生化学作用
  • 抗炎症
  • 抗菌
  • 抗アレルギー
注意
カレンデュラもカモミールもキク科植物です。キク科植物にアレルギーのある人は気をつけましょう。犬猫では菊アレルギーは非常にまれですが、猫でアレルギーが疑われる皮膚症状が報告されています。

アロエ

種ではなく株から育て、株分けやさし木で増やしていきます。

使用するのは葉の中のゼリーの部分。外皮とゲルの間の黄色〜オレンジ色のラテックス層(アロエラテックス)を誤って口にすると、嘔吐、下痢などを起こすので注意しましょう。

外用薬として、切り傷、やけど、膿瘍、感染、湿疹などの皮膚病変にゼリーを直接当てると皮膚の治癒を促進します。猫のウイルス性結膜炎や口内炎にも使用することができます。

内用としては、腸の蠕動運動を促進する作用があるため、便秘の改善に役立つことがあります(体重 1 kg あたり0.5〜1.5 mL を目安。効果が現れるのは数時間〜半日後)。特に便秘中にイライラしたり眠れなくなる犬猫に向いています。ただし、常用すると胃腸を冷やしすぎるため気をつけましょう。

薬膳効果(内用)
  • 下方への排出を促す(緩下剤 )
  • 肝臓の熱を鎮める

生化学作用
  • 創傷治癒の促進
  • 抗炎症

「カレンデュラの育て方」「カモミールの育て方」「アロエの育て方」でネット検索してみましょう。初心者でも簡単に栽培することができます。

ドライハーブの作り方

  1. 花が完全に開いた新鮮なものを収穫します。いっぺんに咲くわけではないので、毎日少しずつ収穫していきます。午前中の水やり前がおすすめ。庭で毎年勝手に育って欲しい場合は、すべてを摘み取らないようにします。
  2. 花のすぐ下でカットし、ペーパータオルやキッチンタオル、新聞紙の上に広げて、直射日光に当たらない場所で乾燥させます。ときどきひっくり返しましょう。カレンデュラは花を下に向けるか、花びらだけつむと早く乾燥させることができます。熱を加えなければフードドライヤーを利用してもOK。
  3. 完全に乾燥してパリパリになったら清潔な保存ビンに入れて保存します。水分が残っているとカビが生えやすいので注意しましょう。

  • Chen & Chen. Chinese Medical Herbology and Pharmacology. Art of Medicine Press. 2004.
  • Wynn & Fougère. Veterinary Herbal Medicine. Mosby 2006.