歯みがきは、愛犬や愛猫の健康のために私たちが毎日できる大切なことの一つです。私たちのところにはハーブやサプリメントといった「何か特別なもの」を期待してさまざまな方がやってきますが、なによりも先におすすめしているのが歯みがきです。
ラッキーなことに日本はペット用のデンタルグッズが豊富な国。いろいろな製品を試しながら、楽しんでデンタルケアを行うことができます。
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歯周病は全身の問題
唾液成分を足がかりにして細菌が歯の表面で繁殖し、歯垢(プラーク)を形成するまで24時間かかりません。この何万という数に増えた細菌に唾液成分や細菌が作る成分が混ざり合いながらバイオフィルムという強固な膜が形成されます(Bellows 2019; Holmstrom 2013; Niemiec 2017)。バイオフィルムで守られた細菌には抗生物質も抗菌剤もほとんど効きません。
重要なのは、目に見える部分のプラークではなく、目に見えない歯周ポケット内で形成されたプラークです。これが歯肉炎を起こし、やがて周囲の組織を侵襲する歯周病を引き起こす犯人。つまり、目立った歯垢や歯石がなくても歯周病になる可能性は十分にあるのです。
これが問題!
歯周ポケットから歯肉へ、そして歯を支える骨へと入り込んだ細菌は、犬猫の免疫系を刺激して炎症を引き起こし、周りの組織を溶かしていきます。その一方で血管にも入り込み、全身に広がっていきます。犬と猫では特に心臓弁、肝臓、腎臓にトラップされやすく(DeBowes 1996)、これらの臓器に障害を起こすと同時に、全身の免疫が刺激された状態が続きます。
ホームケアの目標は、プラークが歯周ポケットに入り込む前に阻止すること。しっかり張り付いたバイオフィルムを落として再形成を予防するには、機械的な方法と化学的な方法の2つのアプローチが必要です。
- 機械的な方法
歯をこすることによって、頑固なバイオフィルムを削ぎ落とすこと。
- 化学的な方法
殺菌成分や歯垢を溶かす成分を使って歯垢の蓄積を予防すること。単独では効果が低いので注意。
口臭が気になったら、もうすでに歯周病に向かいはじめた証拠。「動物だから当たり前」ではありません。すぐにケアを始めましょう。
歯ブラシ選びのコツ
塗るだけ、かじるだけ、なめるだけ・・・便利なデンタルグッズやおやつはたくさんありますが、残念ながら歯ブラシに勝るものはありません。今年の4月に発表された新しい臨床試験でも、「酵素系歯みがきと歯ブラシで1日1回ブラッシング」「デンタルガム」「デンタルケア用ペットフード」の効果を比べたところ、デンタルクリーニング後のプラークの再形成を防げたのは歯みがきだけでした(Allan 2019)。
形の違う歯ブラシを2〜3本用意しましょう。
歯ブラシの持ち方や動かし方は、人によってクセがあり、毎日同じブラシで同じように磨いていると、同じところしか磨けません。右利きか左利きかによっても磨きやすい場所とそうでない場所がありますよね。
磨き残しをなくすために、形状の違う歯ブラシをローテーションで使うのがおすすめ。前歯と奥歯で歯ブラシを変えるのもよいアイデアですね。
例えばこちらは小型犬・猫用ですが、大型犬にも重宝。薄型ヘッドで歯の裏もみがきやすく、極細毛は歯周ポケットや狭い歯間にも入り込みます。柄が細くて長いので長頭種でも一番奥の歯まできちんと届きます。
昔は歯石ができやすい歯の表側だけ磨けばいいといわれていましたが、歯科レントゲンが普及して思っていたよりも歯周病が進んでいることがわかってきました。私たちは歯の裏もみがくことをおすすめしています!
こちらは短い鉛筆のように持って使うことができるタイプ。横からも正面からもアタックしやすいのが利点です。
指サックタイプは噛まれるのが心配な方や、ブラシは嫌いだけど飼い主の指なら絶対に噛まない忠犬タイプに。奥歯や歯の裏、小型犬、猫には大きすぎるのが難点。
人用のワンタフトブラシは、歯を1本1本丁寧にみがくことができます。歯と歯の隙間が大きい子や歯並びが悪い子にもおすすめです。
他にもいろいろな形があります。口の大きさ、鼻の長さ、使い勝手に合わせてぴったりのものを見つけてくださいね。
天然成分配合のデンタルジェル
歯ブラシはバイオフィルムを機械的に落としてくれるものですが、その効果を化学的に助けてくれるのが犬猫用の歯磨き粉です。ジェルやペーストなどさまざまのものが売られています。
どの製品も「塗るだけ」「なめるだけ」で効果ありとしていますが、私たちはブラシとの併用をおすすめしています。
ベッツライフは動物病院専用、ペッツライフは市販用です。当サイトの監修獣医師も使っている病院専用品の方が作用が高くなっていますが、ブラシを併用すれば市販品でも効果はそれほど変わりません。
ブドウ種子オイル、グレープフルーツ種子エキス、タイムオイル、ニームオイル、ペパーミントオイル、アルコールが相乗的に働いて、細菌の増殖とバイオフィルムの形成を防ぎ、歯茎の炎症を抑えます。ミント味とサーモン味があります。ごく少量でOKなので、お腹の弱い子にも安心。歯周病になりやすい犬種ナンバーワンのダックスフンドや猫ちゃんでもキレイな息を維持できます。
舌につけると唾液がだーっと出てしまう子がときどきいます。使用量を再確認し、何回か使っても慣れないようなら、別の製品に変更しましょう。
Leba III(リーバスリー)、さわやかブレスシリーズなども自然派獣医師の間で好評です。
持ち合わせの内服用ハーブエキスがあれば歯みがきペーストに1滴混ぜてみましょう。
- ミルラ
- ざくろ果皮エキス
- グレープフルーツ種子エキス
- カモミールエキス
すでに歯垢の蓄積や歯石が気になる場合は、まずは酵素タイプがおすすめ。気になるところに1日2〜3回丁寧に擦り込みます。浸透させてからブラッシングしましょう。
酵素が得意な Zymox 社の製品。創傷治癒・抗菌・抗炎症作用のあるアロエベラやラクトフェリンを含み、複数の酵素がバイオフィルムに作用。唾液が少なく、ドライマウスによる口臭が気になる子にもおすすめ。
チキン、バニラミント、シーフード、モルトと数種類のフレーバーがあり、気難しい猫にも犬にも受け入れてもらいやすいため、これから歯みがきを始める方におすすめです。
口腔内の善玉菌(好気性細菌)を増やすと、口腔環境が変化し、歯周病の原因になる悪玉菌(嫌気性細菌)が増えにくくなります。口腔内だけでなく喉や気管支も保護し、歯周病によって崩れた全身の免疫系のバランスを回復するのにも役立つでしょう。
ビーグル犬をモデルにした実験では、複数の種類のプロバイオティクス(Streptococcuss sanguinis・S. salivarius TOVE株・S. mitis BMS株)を歯周ポケット内に繰り返し注入すると、悪玉菌の増殖が抑制され、周囲の骨密度も改善することが報告されています(Teughels 2007;Nackaerts 2008)。また、犬の歯垢から分離した細菌を Lactobacillus casei DG株・L. acidophilus LA-5株・Bifidobacterium BB-12株と一緒に培養した実験では、Lactobacillus casei DG株が悪玉菌を抑制する効果がもっとも高かったことが報告されています(Zambori 2016)。
現在、ブリス菌(Streptococcus salivarius K12株)、ロイテリ菌(Lactobachillus reuteri)など、複数のデンタル用プロバイオティクスが販売されています。犬と猫で安全性と効果が確認されているものを購入しましょう。ただし、一頭一頭または製品によって効果が大きく異なり、単独では効果が現れにくいのが現実。歯磨き粉の代わりに使用することもできますが、使用方法やタイミングも効果に影響するので、製品の説明書にしたがって使うようにしましょう。
市販のデンタルジェルにプロポリスを混ぜると抗菌作用が高くなります。小さじ1/2〜1杯に1滴程度混ぜれば十分。苦味があるので、歯みがきに慣れてから使うようにしましょう。アレルギー体質の子には注意が必要です。
歯周病が進行して化膿してしまったけれど、年齢や病気のために歯科手術が受けられないような子には、殺菌作用のあるオゾン水やオゾン化オイルがおすすめ。皮膚病や外耳炎にも使われています。
オゾン水やオゾンオイルを選ぶときは、信頼ができるメーカーか確認しましょう。オイルはオゾンを保ちやすいヘンプオイルやひまわり油、オリーブオイル、もともと抗菌成分が含まれるココナッツオイルがおすすめです。味がイマイチなので少しずつ慣らして。人のデンタルケア用のオゾンオイルには、キシリトール、アボカドオイルなどの犬猫に向いていない成分が使われていることがあるので、必ず全成分を確認してください。
生まれてから一度も歯周病になったことがなく、口臭も気にならない子の場合は、水だけでブラッシングしてもOK。歯周病の原因になるバイオフィルムやプラークは、ブラシによる機械的な作用で取り除くことができます。抗菌効果のあるデンタルペーストを使わなければ口腔内にもともと住んでいる善玉菌を育てることができます。
- 少量のベーキングソーダ(食品用の重曹)をぬるま湯またはココナッツオイルで溶いて、ブラッシング。スクラブ効果と抗菌効果があります。尿pHが変化することがあり、ナトリウムを含むため、塩分を控えなくてはいけない病気(心臓病、腎臓病など)や尿石症がある場合は避けましょう。
- ココナッツオイルを湯煎で柔らかくし、クローブオイルとプロポリスを少々混ぜます(香りがするかしないか程度の量)。容器に入れて冷ますと固まります。
上手な歯みがき方法
- 必要量のデンタルペーストを指にとり、マッサージしながら歯全体に広げ、歯垢に浸透させます。使用量は製品の説明書を確認しましょう。
- 歯茎と歯の境目に歯ブラシをあてて、優しくブラシしてあげます。力を入れてゴシゴシこするよりも、ブラシを45˚の角度であて、毛を立てたまま軽くブラシした方が、効率よく汚れを落とすことができます。
- わんちゃんは歯の裏側も忘れずに。歯石がたまりやすいのは外側ですが、歯周病は歯の裏側にもできます。猫ちゃんはザラザラした舌が歯ブラシがわりになるので、裏側はできたら程度で大丈夫です。
- 歯みがき後は30分ほど水を飲ませないようにします。抗菌成分や酵素をポケット内までじっくりと浸透させましょう。
- 歯ブラシを食器用洗剤などでよく洗って乾かします。
- すでに歯肉炎や歯周病がある:1日2回〜
- 猫・小型犬:1日1回〜
- 中型犬〜大型犬:1〜2日に1回
- 歯周病になりやすい犬猫(短頭種、歯の隙間が狭い、歯並びが悪い、不正咬合、ドライマウスなど):1日2回〜
口臭がまったくしない頻度が最適な回数です。
歯みがきに慣れてもらう
何もケアをしなければ1〜2歳までに歯肉炎や歯周病が発生します。好奇心旺盛な子犬や子猫の頃から歯みがきに慣れさせ、歯茎マッサージの気持ちよさを覚えてもらうのが一番ですが、おとなになってからでも慣れさせることは可能です。歯みがき嫌いにならないよう、数週間かけてゆっくりと慣れてもらいましょう。
- チューブから出した歯みがき少量と歯ブラシを生活環境の中に置いておきます。
- 食事、ベッド、ぬいぐるみ、おもちゃ、流し台(←猫)など、お気に入りのもののそばに置いておくと、好きなことと結びつけて覚えてくれます。
- 歯みがきは、チキン、サーモンなど、フレーバー付きのものが受け入れてもらいやすいでしょう。
- 歯みがき少量を自分の指につけ、なめさせてみましょう。なめたら、ほめてから好きなおやつを与えます。指からなめない場合は、犬または猫の口元、手先に塗ってなめるのを待ちます。なめたら、ほめてご褒美を与えます。
- 1度であきらめず、毎日繰り返してください。
- 歯みがきをつけた指で前の方の歯を触ってみましょう。
- 唇を持ち上げたり裏返したりして、口に触るのにも慣れてもらいます。
- 慣れるまで毎日繰り返します。触らせてくれたら、その都度、ほめてご褒美を与えます。
- 歯ブラシに歯みがきをつけて、匂いを嗅がせたり、なめさせたりしてみましょう。
- なめたらご褒美を忘れずに。
- なめない場合は、口元や手先に塗ってみましょう。
- 唇を軽く押し上げて、前の方の歯から磨いてみましょう。
- いっぺんに磨こうとせず、1日1本ずつ磨く歯を増やしていきます。
- 力を入れてゴシゴシこすってはいけません。ブラシを45˚の角度であて、毛を立てたまま優しく素早く磨いてあげます。
- 磨かせてくれたら必ずご褒美を!せっかく磨いたのにおやつで汚すのは変な話ですが、完全に慣れるまで続けましょう。
- じっとせずに動いてしまう場合は、ソファや床に一緒に座り、犬や猫を小脇に抱えてマズルまたは顎を優しく持ちます。反対の手で歯ブラシを行います。お腹を上にして膝の上に寝かせた方が落ち着く子もいます。
1回であきらめずに毎日繰り返してみて。「歯みがき・歯ブラシ=ごほうび」とインプットできれば、歯みがきや歯ブラシを出してきただけで寄ってくるようになります。
どうしても歯ブラシが無理なら・・・
これだけ手間をかけても歯みがきを嫌がる子は、もしかしてどこかに痛みがあるのかもしれません。かかりつけの病院でチェックしてもらいましょう。
歯みがきができない場合も、「機械的」な方法と「化学的」な方法を組み合わせると効果が高まります。
- 機械的な方法 = 歯をこすることによって歯垢を落とし、蓄積するのを防ぐ
- 化学的な方法 = 殺菌効果のあるハーブや歯垢を溶かす酵素などを使う
手作り食を実践している方なら骨や骨つき肉がおすすめです。骨を噛んだり、肉やスジを噛みちぎる動作で、歯垢を機械的に除去することができます。大型犬の場合はこれだけで十分なことも。こちらのわんちゃんは、ラムの背骨をかじるようになってから歯の表も裏もピカピカになったそうです。
丸飲みせずに時間をかけてかじれる形と大きさ、固さの骨が理想的です。いろいろな種類の骨を試して、相性のよいものを見つけましょう。
詳しくはこちらをご覧ください。
骨給与ガイドデンタルペーストを塗ったり、おやつを中にいれて使います。飽きやすいので、フレーバーを変えて長時間遊べるようにしましょう。ロープタイプなら一緒に遊ぶこともできますね。
ブラシは受け付けなくても、ワイプや綿棒なら大丈夫かもしれません。デンタルジェルを塗って、歯を優しくこすります。
塗るだけ、舐めるだけ、水に混ぜるだけの製品、デンタルガム、ローハイドなどさまざまな製品があります。成分をチェックして安全なものを使用しましょう。
口臭がなくならない
奥歯や歯の裏まで毎日磨いているのに口臭がなくならない場合は、病院での検査が必要です。歯や歯茎はきれいに見えても、歯周ポケットや潰瘍、瘻管などが隠れていたり、腫瘍や異物など別の異常があるかもしれません。抜いた歯の跡が穴になり、食べ物のカスがぎっしり詰まっていることもあります。
鼻水や逆くしゃみ、よだれといった症状がある場合も要注意。歯や歯茎を通り越して歯槽骨から顔の骨まで炎症が及んでいることがあります。原因を見極めて適切な対策を行いましょう。
炎症を抑える内服ハーブ
歯周病の治療は、歯科手術が一番効果的です。手術を避けようと自宅であれこれ試している間にも細菌や炎症が全身に広がり、かえって手術よりも体に負担をかけている可能性があることを覚えておいてください。
でも、年齢や病気のために麻酔をかけた処置がどうしても難しい場合がありますよね。そういう時は、抗菌・抗炎症効果のあるハーブの力を借りましょう。
バプティシア(※) | 20 mL | 抗菌・口内炎の緩和 |
エキナセア | 30 mL | 抗菌・抗炎症・免疫賦活 |
バイカルスカルキャップ | 30 mL | 抗炎症・抗不安・肝保護 |
デビルズクロー | 20 mL | 鎮痛 |
合計 | 100 mL |
口腔や上部気道の感染症に効果のあるハーブや抗炎症・鎮痛作用のあるハーブを組み合わせます。標準的な50%濃度(0.5 g/mL)のリキッドハーブを使った場合の量を示しました。
体重 5 kg あたりの1日量は 0.5〜2 mL。これを2〜3回に分けて食事と一緒に与えます。最小量から始めて、1週間ごとに効果(鼻水が減るなど)が感じられるまで増量していきます。効果が現れたらその量で数週間継続し、その後はバプティシアなしで5日間与えたら2日休むというサイクルで維持します。
この中で歯周病に対する作用が一番強いのがバプティシア(Baptisia tinctoria L. Venten・ワイルドインディゴ)ですが、高用量または長期投与で副作用(主に消化器症状)が出やすいので注意が必要です。上記の最大量を必ず守るようにし、副作用が現れたらすぐに中止してください。
パプティシアを加えない場合は、長期投与が可能です。体重 5 kg あたり0.4〜2 mLを1日2〜3回に分けて与えます。
そのほか、カレンデュラ、ゴールデンシール、ミルラなどを使うことがあります。
よくある質問
食事の内容や品種によって大きく異なります。
手作り食を食べている犬や猫を10年以上にわたって診療してきましたが、残念ながら歯周病になる子はよくいます。例えば、食材を細かく切ったり、ミキサーで液状にしている場合は、噛みちぎるという歯垢を機械的に除去する動作がほとんどなくなるため、歯垢がたまりやすくなります。
歯周病になりにくい例
- 大型犬
- 骨や骨つき肉、動物を丸ごとを食べさせている
- 食材を細かくせずかじらせている
- 炭水化物を与えていない・・・など
すべての犬猫に共通というわけではありません。
大型犬は比較的きれいな状態を保つことができます。大型犬は寿命も短いため、歯周病が問題になるよりも他の病気になる方が早いせいもあるでしょう。
歯の隙間が狭い小型犬や猫、長毛種、歯並びが悪い子は、歯の隙間に詰まった食べ物や毛を骨だけで取ることは難しいでしょう。
ダックスフンドやシェルティなどの一部の犬種は歯周ポケットや瘻管ができやすく、歯垢や歯石がまったくなくても歯周病になります。
骨や骨つき肉を食べているときに、どの歯を使っているかも観察してみてください。多くは奥歯しか使っていないと思います。使っていない歯は、きちんと磨いてあげましょう。
見た目をきれいにしたいだけならOK。歯周病を予防したいなら注意が必要です。
本文中でも説明しましたが、歯肉炎や歯周病を起こすのは歯茎の下の歯周ポケットの中の歯垢です。
無麻酔のスケーリングや超音波による歯石除去は、歯茎の外の見えている部分しかきれいにすることができません。無麻酔で歯周ポケットの中や歯の裏まで処置させてくれる犬や猫は皆無といっていいでしょう。
見た目がきれいになることで、誤った安心感を持ってしまい、気づいたら歯周病が重度になっていることがよくあります。
手術や麻酔を怖がる気持ちはとてもよくわかりますが、事前にきちんと血液検査を行い、施術時間や全身状態にあった麻酔薬や鎮痛薬を選び、麻酔中のモニタリングをしっかりと行う病院であれば、歯科手術による事故や副作用が起こることはほとんどありません。また、短い施術でもきちんと点滴を行なってくれる病院もあります。でも中にはしっかりしたフォローアップを行なっていない病院もあるので、飼い主さんの評判も確認して信頼できる病院を選びましょう。
はい、大丈夫です。振動と音に耐えられるようでしたら試してみてください。
- Allan RM, Adams VJ, Johnston NW. Prospective randomised blinded clinical trial assessing effectiveness of three dental plaque control methods in dogs. J Small Anim Pract. 2019 Apr;60(4):212-217.
- Bellows J et al. 2019 AAHA Dental Care Guidelines for Dogs and Cats.
- DeBowes LJ, Mosier D, Logan E, Harvey CE, Lowry S, Richardson DC. Association of periodontal disease and histologic lesions in multiple organs from 45 dogs. J Vet Dent. 1996 Jun;13(2):57-60.
- Holmstrom SE. Veterinary Dentistry: A Team Approach. 2nd Ed. Saunders 2012.
- Nackaerts O et al. Replacement therapy for periodontitis: pilot radiographic evaluation in a dog model. J Clin Periodontol. 2008 Dec;35(12):1048-52.
- Niemiec BA et al. 2017 World Small Animal Veterinary Association Global Dental Guidelines.
- Teughels W et al. Guiding periodontal pocket recolonization: a proof of concept. J Dent Res. 2007 Nov;86(11):1078-82.
- Wynn & Fougère. Veterinary Herbal Medicine. Mosby 2006.
- Zambori C, Morvay AA, Sala C, Licker M, Gurban C, Tanasie G, Tirziu E. Antimicrobial effect of probiotics on bacterial species from dental plaque. J Infect Dev Ctries. 2016 Mar 31;10(3):214-21.