獣医師による手作り食・自然療法ガイド

File 11:エコ特集

手作り食やハーブ療法を取り入れている飼い主さんは、自然環境に対する意識も高い方ばかりです。生態系における肉食動物の役割、病気を「からだ」と「生活環境」の一部として捉える自然医療について普段から考える機会が多いためですね。愛犬と愛猫も大切だけど、その健康を育む自然環境もできるだけ守りたい・・・今月の自然派わんにゃんカルテでは、そんな飼い主さんたちが集まってくださいました。

プラスチックフリー保存

食材の小分けに使うラップやジップロック。溶出する化学成分については昔ほど心配はなくなりましたが、環境への影響は大きなもの。特にラップはリサイクルが難しく、世界中で問題となっているプラスチック汚染を悪化させています。

中型犬〜大型犬ならタッパーやワックスペーパーを使って塊肉をそのまま冷凍庫に放り込むことができますが、問題は1回の食事量が少ない小型犬や猫。一生を通してどれだけラップを使うのか計算すると・・・ギリギリまで小さいサイズを使ってもタタミ500畳分を軽く超えます。

内臓肉の保存もこれで楽々
ステンレス製氷皿

東京にお住まいのKANN様が利用しているのはステンレス製氷皿。ステンレスは食品への影響がなく、資源として100%リサイクル可能な物質です。

18個のブロックに分かれていて、中の仕切りを外すことができます。

1ブロックが1日分になるよう18日分の内臓肉の量を計算。ミキサーで混ぜます。水を少々加える必要があるかもしれません。

[体重 × 0.1%] × [18穴]

KANN様のわんちゃんは11 kg。1日に必要な内臓肉の量は1種類あたり 11g ずつ。11 × 18 = 198 g になるので、いつも200 gを使用。2種類の内臓肉を保存する時は 200 g × 2 = 400 g、3種類の時は 200 g × 3 = 600 g が全量。

均等に容器に詰めます。600 g(550〜600 mL)くらいまでならはみ出さないそうです。

仕切りを戻し、カバーをかけて冷凍庫へ。ラップではなくアルミホイルかミツロウラップを使用しているそうです。

1〜2日後、冷凍庫から取り出し、仕切りのレバーを引くと中身がガコッと外れます。時間が経って固くなりすぎたら冷蔵庫で1時間ほど置いておくと、レバーが引きやすくなるそうです。

保存容器に入れ替えて再び冷凍庫へ。与える前日に1個だけ取り出して冷蔵庫に移します。容器にくっついて取り出せない時は、5分ほど室温においておくといいそうです。

専用のフタも売っているのですが、スキマが大きくて冷凍焼けしてしまうし、仕切りが入っているときには使えないため、おすすめしませんとのことです。

レトロな製氷皿は50年以上も同じデザインで作られているとか。氷菓子やおやつにも大活躍しそうですね。最近では、手軽に使えるシリコン製の製氷皿もよく見かけるようになりました。

飼い主さまより

以前は1口大にカットして1日分ずつラップで包んでいました。大型犬がうらやましい・・・と思いながらチマチマと1時間以上かけて作業。それが、現在では10分程度に短縮。トレイ1個で18ブロック=18日分なので、トレイ2個を使って、まとめて作っています。

唯一の欠点は、内臓肉を湯がいて温めることができなくなったことです。主食を熱めに準備して、冷たい内臓肉を混ぜたときにちょうどよい温度になるよう調節することで解決しました。


シリコン製ベビーフード保存容器を活用

猫を飼っている当サイトのスタッフは、シリコン製の赤ちゃん用離乳食保存容器を利用。シリコンは耐熱性・耐凍性に優れ、プラスチックのようにBPAを含まず、食品とも反応しないといわれている人気急上昇中の素材です。

1ブロック75 mLタイプは猫の1食分にちょうどよい大きさ。小型犬にも使えそうです。まずは主食を計りながら入れて・・・

隙間に内臓肉、野菜(発酵・生)、スープ、サプリメントを詰め込みます。

蓋をして冷凍庫へ。子供用と猫用を色で使い分けています。

シリコンは食品がくっつかないので、底を押すだけで、ポンと中身が取り出せます。解凍にもシリコン容器を使えば、そのまま湯煎で温めることができます。時間がない時は熱湯をジャッとかけて。

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パテ・テリーヌタイプのキャットフードを再現。1食分に必要な栄養素を詰めて、与える時の手間をなるべく省いています。

シリコン容器は、製造方法によっては、環境に必ずしも優しいというものではないそうですが、プラスチックよりも生体への安全性が高く、耐久性もよいため何年でも使うことができます。

ちなみにガラス容器を利用していた頃もあったそうですが、冷凍庫内で幅をとるため、あきらめたそうです。

キッチンがオアシスに

静岡県の藤森さまよりご投稿いただきました。家庭で育てる常備薬の記事をご覧になり、ハーブ栽培に初挑戦。現在では、手作り食に使用する葉物野菜はすべてご自分で作るまでになったそうです。

ご友人の庭から土を譲っていただき、市販の種を購入してキッチンの隙間におさまる小さな鉢で開始。ミント、パセリ、水菜はすぐに生えてくるので一押しとか。

シソは種を何回か撒いてやっと2〜3本生えてきたそうです。それでもいきいきと育ってますね。鉢植えだと、すぐに食べなくても痛まないので経済的です。

ブロッコリースプラウトは音が聞こえるんじゃないかというくらいメキメキと成長。撒いて数日で食べられるように。

今年はミニレタスにも挑戦。可愛くて収穫するのがもったいないくらいです。人間のサラダには足りませんが、犬と猫のごはんには何日も持ちます。

ローズマリー。昨年植えて、ようやくここまで育ちました!使っていなかったココット皿も鉢になります。

1食分ずつ収穫。

切ってごはんに混ぜます。

飼い主さまより

虫が嫌いなので土いじりはまったくしたことがありませんでした。でも室内なら虫がつくこともなですし、肥料も必要ありません。初めて芽が生えてきたときは、こんなに適当な初心者でも育ってくれるものなのかと植物の生命力に感動。毎日ありがとうと手を合わせてからいただいています。

殺虫剤に頼らないノミ予防

東京都のマロンちゃんの悩みはノミ。夏にドッグランに行くとノミをつけて帰ってくることがあるそうです。年に1回あるかないかのことなので、ノミ駆除剤を使わずに予防できる方法はないかと飼い主さまからご相談を受けました。

散歩前の精油スプレー薬浴もおすすめですが、飼い主さまご自身が肌が弱く、精油製品で接触皮膚炎を起こしたことがあるとのこと。そこで珪藻土パウダー(ダイアトマイト)をおすすめしました。

珪藻土は、数百万年前の藻が化石になり、堆積してできた地層を掘り出したもの。主成分はシリカ(二酸化ケイ素)というミネラルです。日本では主に工業利用されていますが、欧米では害虫駆除から人・犬・猫の健康管理まで広く利用されています。

こんな感じの白いパウダー。食用のものを購入するとサプリメントとしても利用できます。マロンちゃんの飼い主さまは日本で購入先が見つからなかったため、アメリカのご友人から送ってもらったそうです。

珪藻土は吸水性に優れた針状の結晶で、ノミ、ゴキブリ、アリなどの昆虫が持つ外骨格(甲)を傷つけ、脱水を起こさせて死滅させます。ネズミ、ミミズなどの硬い殻を持たない動物には作用しません。

使い方

まずはマスクを準備。粉が舞いやすいため、吸い込まないよう注意します。肌が弱く乾燥が気になる方は手袋も着用してください。

シェーカー(調味料入れ)に珪藻土を入れます。

犬猫の体に軽くふりかけ、首から下の被毛全体に行き渡らせます。犬猫の目、鼻、口、肛門の粘膜部分に触れないよう気をつけましょう。

ブラシで余分な粉を落とします。わかりやすいよう黒犬で実演したら、流行りのグレーヘアになってしまいました(1日で元に戻りました)。

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獣医師より

肌の乾燥が気になる犬猫には、カレンデュラフラワー 、ニームリーフ、タイム、セージ、ヤロウなどのパウダーを 1:1 で混ぜてあげて。

飼い主さまより

うちの子はシーズーなので色は目立ちませんでした(笑)

ドッグランに行く直前に使用。この夏は数回ドッグランを利用しましたが、一度もノミを連れて帰ってきませんでした。

抱っこしたときに粉っぽいのが気になりますが、なめても安全で、環境にも無害ですし、効果的には大満足。でも、つけるときは本当に粉が舞いやすくて、マスクは必須です。目にも入りやすいので、メガネもおすすめです。500グラムの一番小さな袋を送ってもらったのですが、年数回の使用だと数年は持ちそう。10ドルくらいだったので送料と友人へのお礼を考えてもかなりお得です。

  • 犬猫のノミ・ダニ予防に。
  • すでにノミやダニがついている場合は、寝床やカーペット、ソファー、家具の隙間など、ノミやダニが潜んでいそうなところにも振りかけて放置します。定期的なシャンプーも組み合わせて。ノミやダニがいなくなったら、珪藻土をダスターかチリトリとホウキで除去。フィルター式の掃除機で吸い取るとフィルターが目詰まりするので気をつけます。ノミの卵には効果がないので、珪藻土を振りかける前に、徹底的に掃除機をかけてノミの卵を除去するようにしましょう。そうしないと翌年、またノミが発生します。
  • サプリメントとして。シリカは皮膚や被毛、爪、骨の健康に大切なミネラルです。骨や石化海藻など、シリカが入った食材を利用していない場合は、食用の珪藻土を食事に少量混ぜてあげましょう。1日量の目安は猫・小型犬で小さじ1/4〜1/2、中型犬で小さじ1、大型犬で大さじ1。与えすぎると便秘するので気をつけましょう。十分吸水させてから与えると、便秘を起こしにくくなります。人の場合は、小さじ1からスタート。スムージーなどに混ぜて食間に。
  • デトックスに。多孔質の珪藻土は、活性炭やクロレラと同じように重金属や毒素を吸着して体外に排出するといわれています。
  • 歯みがきに。使用中の歯みがきペーストやココナッツオイルに少量を加えます。
  • 飼い主さまのスキンケアに。フェイシャルマスク、スクラブ、デオドラントなど、たくさんの使い道があります。
  • 自宅の害虫駆除に。家具の隙間、戸棚の下、米びつの周り、家の周囲など、害虫の通り道や隠れ家になりそうなところに撒いておきます。犬猫がなめてしまっても安心ですね。
  • 家の中の掃除や消臭に。重曹のように、酢や水と混ぜてクリーナーを作ったり、シミ落としに使うことができます。靴の消臭にも。
  • シリカ 80〜90%
  • アルミナ2〜4%
  • 酸化0.5〜2%
  • 残りはカルシウム、マグネシウム、ホウ素、マンガン、銅、チタンなど。
  • 製品によって若干異なります。

環境のためにできること

普段の忙しい生活の中でも、環境を守るためにできることは他にもたくさんあります。

  • ラップを使うときは、生分解し焼却時に有毒物を排出しない製品を選ぶ。
  • 自然農法や有機農法(オーガニック)の食材をできる限り利用。魚は天然物を。環境を汚染したり、負荷をかけたりしない方法で健康な肉や卵、野菜を育てている農家さんや自然資源を守りながら働いている漁師さんを応援しましょう。人工ホルモン、抗生物質、化学肥料、農薬などの蓄積も少なく、野菜は旬のものしか手に入らないため、愛犬や愛猫の健康にも安心です。
  • うんちバッグは、生分解し焼却時に有毒物を排出しない袋を使用。犬のうんちなら安全に堆肥処理し、ガーデニングに再利用する方法も開発されています。
  • ペットシーツは、洗って何度でも使える布製のものに切り替え。
  • 猫ちゃんの場合は、トイレの素材を自然なものに。ウッドチップ、リサイクル紙など、さまざまな選択肢があります。ただし、粉が舞いやすいシリカやクレイタイプは呼吸器問題を起こすことがあるのでおすすめしません。
  • シャンプー剤は、合成洗剤ではなくナチュラルソープを。手作り食を食べていれば、毎日のブラッシングで皮膚や被毛を良好に維持することができ、シャンプーは1〜2ヶ月に1度でも体臭が気になりません。室内猫ちゃんは洗う必要がまったくないでしょう。
  • 自分たちの使い古しの服や毛布、タオルを利用して、愛犬や愛猫のベッドやクッションに。大好きな飼い主さんの匂いに囲まれてぐっすり眠ることができます。ブラッシング後の犬の毛を集めて毛糸やクッションの詰め物にしている器用な飼い主さんもいらっしゃいます。
  • お尻、顔、耳を拭くティッシュやワイプを柔らかいオーガニックコットンの布に。
  • 薬浴に使うハーブティーは、ルーズリーフのものを選ぶか、プラスチックフリーのティーバッグを選ぶ。
  • 窓際やベランダにたくさんの観葉植物を配置。夏の日射しを和らげ、二酸化炭素やVOC(建築材、壁材、ペンキ、家具などから発生し、シックハウス症候群の原因となる化学物質)を吸収してくれる植物の空気浄化力を活用。犬猫に有毒な観葉植物もあるため、植物の種類や鉢の高さなどに気をつけましょう。
犬猫に毒性を示す植物