音楽が人や犬でリラックス効果を示すことはよく知られており、さまざまな分野の医療で活用されています。今回、猫にも音楽の効果があることが国際猫学会で発表されたのでご紹介します。
論文情報
Hampton A et al. Effects of music on behavior and physiological stress response of domestic cats in a veterinary clinic. J Feline Med Surg. 2020 Feb;22(2):122-128
猫のための音楽って?
今回紹介する論文では、David Teie氏が猫のために特別に作曲した「Scooter Bere’s Aria(スクーター・ベアのアリア)」が使われています。猫の安静時心拍数、喉のゴロゴロ音、母乳を吸う音、人よりも2オクターブほど高い猫の声域を科学的に組み合わせてデザインされたもの。
こちらのサイトで試聴することができます。最初のアルバムの4番目の曲です。
https://www.musicforcats.com/shop
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論文の内容
- 動物病院で健康な猫20頭を対象に「人でリラックス効果があるクラシック音楽」または上記の「猫音楽」をかけるか、「音楽なし」で診察。心理的影響を少なくするため、飼い主は入室せず。
- どの音楽を流しているか知らない第三者が診察中に撮影したビデオをみて、ストレススコア(猫のストレスサインを評価)とハンドリングスコア(取扱者に対する猫の反応を評価)を判定。
- 診察の最後に採血。血液検査を行い、ストレスホルモン(エピネフリン・コルチゾール)の影響で高くなることが知られている好中球/リンパ球比を比較。
- クラシック音楽、音楽なしと比べると、猫音楽を聞いた猫では、ストレススコアとハンドリングスコアが有意に低下。クラシック音楽には、ストレスに対する効果なし。
- 好中球/リンパ球比は、すべての群で若干上昇。「音楽なし」でもっとも高かったが統計学的な差が出るほどではなかった。好中球/リンパ球比が正常に戻るまでは数時間かかるため、検査のタイミングが早すぎた可能性がある。
どんな時に猫音楽を?
今回の研究から、クラシック音楽ではなく、猫のために作られた音楽で猫のストレス行動が減ることが確認されました。
当サイトでも猫を多頭飼いしているスタッフがさっそく試してみたところ、日中にくつろいでいる時間が増え、夢を見る回数も減ったそうです。すやすやと眠っている猫を見るのは、飼い主にとってもリラックス効果がありますね。
- 病院までのドライブ、病院での待ち時間、診察中に。今回の研究では診察室に入ったあと、10分ほど音楽をきかせてから診察を開始しています。猫ちゃんが落ち着いていると、獣医師も丁寧に診察することができるため、病気のサインを見逃しにくくなります。
- 引越し、新しい家族や動物を迎えるなど、環境が変化するとき。新しい環境下ではストレスを克服するまでに5週間以上かかることがわかっています。
- 飼い主のストレスを感じやすい子、怖がりな子、留守番が苦手な子は、毎日の生活に取り入れて。
- 病気療養中。少しでもくつろげる環境を作ってあげましょう。
猫ホテルや猫カフェ、保護施設を運営している方もぜひ。