獣医師による手作り食・自然療法ガイド

がん治療中の手作り食

当サイト監修獣医師の最新記事が学会誌に掲載されました。

テーマは「自然食によるがんケアサポート」。残念ながら学会登録しないとアクセスできないため、許可を得てこちらに抜粋を掲載しました。

がんになった犬と猫では、がんと診断されるよりもずっと前から栄養代謝の変化が起きているため、なるべく早い時期から手作り食に切替え、悪影響を抑制することが重要。同時に、がんの治療には時間も費用もかかるため、なるべくシンプルな食事にすることも長く続けていく秘訣だそうです。

論文情報
Royce MS, Natural Nutritional Support in Cancer Care. J Integrative Veterinary Therapies. 2021 Dec; 9(2): 12-19.

がん療法食のバランス

炭水化物を少なく!

まずは、がん細胞が好む炭水化物を減らすことが基本中の基本。理想的な食事バランスは・・・

肉・魚類50%〜80%〜鶏肉、赤肉(少なめ)、ジビエ肉、いわし、白身魚、卵をローテーション
生骨10%〜5〜10%生骨給与ガイドはこちらから
野菜・ハーブ30%10%ブロッコリー、緑色葉物野菜、スプラウト、パセリ、ブルーベリーなど
炭水化物0〜10%0%根菜類、ソルガムパスタ
上記に加える内臓肉魚油またはクリルオイル海藻(ヨウ素源)植物油。猫はタウリンも。
注:肝臓、腎臓、膵臓、甲状腺の病気やがんの場合は、変更が必要です。

どこかでみたような・・・と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。そう、私たちのサイトでおすすめしている食事バランスや内容とほぼ一緒なんです。がんの予防を考えた食事バランスだったんですね。唯一の違いは、犬用の炭水化物の割合が30%未満から10%未満とずっと低くなっていること。

詳しくはこちらから

これが基本!健康を守るためのワンちゃんの食事バランスこれが基本!健康を守るためのワンちゃんの食事バランス これが基本!健康を守るための猫ちゃんの食事バランスこれが基本!健康を守るための猫ちゃんの食事バランス

レクチン除去食

シンプルで素材を厳選できるレクチン除去食もおすすめ。炎症の素のレクチンをなくすことで、体の負担を軽くし、正常な細胞や免疫の機能を取り戻して、がんと闘いやすい身体を作ります。

レクチン除去食:あらゆる病気の治療になるか

ケトジェニック食(ケトン食)

ケトジェニック食もがん細胞が使えるエネルギーを断つ方法です。脂肪分を増やし、その分、タンパク質量を抑えます。肉の脂身、鶏皮、骨髄などを食事に加えたり(食事全体の30〜40%)、MCTオイル(中鎖脂肪酸;食事全体の5%)を使用します。膵臓の病気の既往がある子には使えません。

動物性脂肪は調理によって酸化しやすいので、生か軽く調理した程度で与えるのがおすすめ。

急に脂肪の量を増やすと消化器症状を起こすので、少しずつ増やします。消化酵素を食事に加えることもできます。

重要な必須ビタミン・ミネラル

ビタミンやミネラルはサプリメントを使わず、なるべく自然な食材を利用するのがおすすめだそうです。生理活性が高く、抗がん剤や放射線治療の効果への影響を考える必要がありません。

がんケアで特に重要な栄養素には次のものがあります。

デトックス

がんの診断時には、多くの動物が肥満気味。長年のペットフードの摂取、生活習慣、環境中の有毒物など、ありとあらゆるものが蓄積して「炎症」を起こした状態になっています。がん細胞の急速な増殖も炎症の素です。

がん診断時にはまず絶食療法で炎症をクリア。そうすることで、身体の負担を軽くし、がんと闘いやすい体内環境を作り出します。いままでペットフード中の炭水化物に頼っていた身体をタンパク質や脂肪を利用しやすい体質に変化させるのにも役立ちます。

安全な絶食方法はこちらから
絶食のススメ

ただし、診断時にすでに痩せてしまっている子は絶食は必要ありません。特に猫ちゃんに多いそうです。柔らかく、消化しやすい食事を作ってあげるといいでしょう。

デトックスには生活環境の改善も大切。飲み水、加工食品、洗剤、クリーナー、不要な予防薬(ワクチン、ノミ駆除剤、フィラリア薬など)を見直しましょう。

詳しくはこちら↓のページの「サプリメント以外でできること」に書いてあります。

肝臓の健康を守るハーブとサプリメント

抗腫瘍・抗炎症食材

記事には、腫瘍の代謝増殖抑制・分化促進・アポトーシス促進・転移抑制、がん免疫賦活、解毒、化学療法・放射線療法感作、抗がん剤耐性抑制などの作用がある化合物とそれらの含む食材の一覧が掲載されています。その一部を抜粋しました。

赤キャベツ赤しそアスパラガスアーティチョークアブラナ科野菜オメガ3脂肪酸DHA/EPAきのこ類(舞茸、椎茸)クロレラごぼう里芋しょうがセロリスピルリナターメリックタンポポ(葉・根)パセリベリー類(ビルベリー、ブルーベリー、クランベリー)ふきのとうプロバイオティクス紫芋ヨモギ緑茶りんごローズマリー

あいうえお順です。効果の高い順ではありません。

抗がん剤の副作用対策

抗がん剤治療の24時間前から6時間後まで絶食するか、食事量を減らすと、抗がん剤が効きやすくなり、嘔吐などの副作用が起こりにくくなるそうです。

食事を再開するときは、いきなり固形食ではなく、おかゆ状にした食事から少しずつ始め、1〜3日かけて元の食事に戻すとよいそうです。

よくある質問と対策

  • 白血球が下がっていない限り安全です。抗がん剤や放射線治療を受ける際に担当の先生に確認しましょう。生ものを与える際の一般的な安全対策も忘れずに。
生ものを与える際の注意点
  • 治療の副作用で一時的に食欲が落ちることがあります。無理に食べさせずに、新鮮な水や温かいボーンスープを常に飲めるようにしておきましょう。食欲がでてきたら、その分のカロリーも補充して。
  • 吐き気や痛みがないか獣医師に相談し、適切な治療をしてもらいましょう。
  • 抗がん剤や放射線治療の副作用で嗅覚や味覚が麻痺することがあります。手で与える、生ではなく調理する、風味付けをする(ボーンスープ、粉チーズ、酵母フレーク、アンチョビ、レバーチップ、ふりかけ)と食べることがあります。
  • 吐き気があるときに無理に食事を与えたり、いろいろな食材を試そうとすると、かえってその食事を嫌うようになることがあるので注意しましょう(特に猫)。あれこれと内容を変えずにシンプルな食事を心がけるとよいそうです。
  • 食欲不振が長く続く場合は、シリンジやチューブフィーディングを行います。いつもの手作り食をミキサーでお湯と混ぜ、ゆるいスープ状にして与えます。
  • 食欲不振、吐き気、痛みには鍼灸も効果的。
  • 抗がん剤の種類に合わせて適切な嘔吐抑制剤を処方してもらいましょう。
  • おろししょうがジンジャーティー、シナモン、カルダモンなども効果あり。
  • 胃酸抑制剤のシメチジンは抗腫瘍作用もあります。胃酸を抑制するため、食事は柔らかく消化しやすいものにしてあげましょう。