「動物だからすぐ慣れる」「一時的なことだから大丈夫」は思い違い!犬猫はストレスを隠すのが非常にうまく、どんなによく気がつく人でも見逃してしまいがちです。ケロっとしているように見えて、実は体の中にストレスを閉じ込めているかもしれません。
犬と猫にとってのストレスとは
犬と猫にとってのストレスにはさまざまなものがあり、1頭1頭によって異なります。
その他にも雷や風の音などさまざまな状況が考えられますが、ストレスが長く続くほど体への影響は大きくなります。
ストレスが及ぼす身体的・精神的な影響
自律神経やホルモンバランスの乱れ、副腎疲労、免疫力の低下により様々な症状が現れます。すぐに症状が現れる場合もあれば、日常的なストレスが続いた結果、数週間、数ヶ月が経過してから症状が現れる場合もあります。
ストレス自体を減らしてあげることが理想的ですが、生活していく上でストレスは避けて通ることはできません。つまり、ストレスに強い体を作り、ストレスが引き起こす体や心への影響をなるべく減らしてあげることが大切になります。それがこのページで紹介するサプリメントの役割です。
基本のサプリメント
まずは動物の体の正常な機能に欠かせない必須栄養素をチェック。どんなに高価なサプリメントやハーブを使ってもこれらの基本の栄養素が足りなければ効果が半減してしまいます。特にビタミンC・E・B群は、必要量がストレス時に増えるため、いつもより多めに与えることがおすすめです。これに下の症状別のサプリメントを加えて一頭一頭に合うようカスタマイズしましょう。
抗酸化作用があり、免疫力を高めます。水溶性のため、多めに与えても問題はありませんが、お腹がゆるくなることがあります。また、過剰に与えた分は体外に排泄されてしまうため、毎日こまめに与えるのがおすすめ。
- 猫・小型犬:50〜125 mg
- 中型犬:125〜250 mg
- 大型犬:250〜500 mg
1日2〜3回食事に混ぜて与える。
細胞をダメージから守り、体の抵抗力を高めます。皮膚病から消化器疾患、腫瘍、免疫疾患、各種内臓疾患など幅広い病気の予防・緩和効果が知られています。手術を受ける場合は、担当医に相談してから使用しましょう。
- 猫・小型犬:25 IU
- 中型犬:50 IU
- 大型犬:100 IU〜
1日1〜2回食事に混ぜて与える。
エネルギーの生成、神経系・免疫系の機能など、さまざまな場面で必要とされ、特に急性のストレスに効果があります。水溶性のため、余分な量は体内に貯蓄されず体外に排泄されるため、毎日補給してあげましょう。
アダプトジェン
動物は神経系や内分泌系の働きを変化させ、アドレナリンやコルチゾール(ストレスホルモン)を作り出すことでストレスに対応します。疲弊、自律神経の異常、免疫力の低下、体重の変化などの慢性ストレスの症状は、これらの物質の副作用といえます。
アダプトジェンは、ストレスに適応(アダプト)して体の抵抗力を高め、これらのストレスの影響を緩和してくれる生理活性物質のことで、数種類のハーブが知られています。最近は人用のサプリメントとして質のよいものが購入できるようになったので、犬猫のストレスにもぜひ活用してみましょう。
症状・状況別おすすめサプリ
ストレスの後に発生した腫瘍、結膜炎・膿皮症などの細菌や真菌による感染症は、免疫力低下のサイン。免疫力を高めるサプリを活用しましょう。
サプリメント | 適応例・給与量 |
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霊芝、冬虫夏草(コルディセプス)、マイタケ、しいたけなどのキノコエキス配合のサプリメント | おすすめ度:★★★★★ 犬猫用の場合は説明書に従い、人用の場合は猫・小型犬1/6〜1/4量、中型犬1/4〜1/2量、大型犬1/2量〜同量を目安とし、1日1〜2回に分けて与える。数種類をブレンドしたものもある。 |
乳酸菌 | おすすめ度:★★★★★ 普段与えている場合はそのまま継続。ビオフェルミンの場合は、猫・小型犬1錠(杯)、中型犬2錠(杯)、大型犬3錠(杯)。トライプを食事に混ぜても良い。詳しくはこちらから。 |
エキナセア | おすすめ度:★★★ 感染を起こしやすい子に。体重1 kgあたり乾燥ハーブ25 mg、乾燥濃縮ハーブ8 mg、チンキ剤2〜4滴を1日3回。詳しくはこちらから。 |
キバナオウギ | おすすめ度:★★ オウギ末として体重1 kgあたり100 mgを1日3回。妊娠中、アレルギーには使用しない。詳しくはこちらから。 |
ストレス性の下痢は土タイプの大型犬によくみられますが、小型犬や猫でも多くなっています。嘔吐や便秘、食欲不振として現れることもあります。このタイプには漢方薬が高い効果を示します。
サプリメント | 適応例・給与量 |
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補中益気湯(ほちゅうえっきとう) | おすすめ度:★★★★★ 痛みを伴わない下痢、尿失禁、便秘、食欲不振、体重低下に。緊張すると粗相をしたり、トイレが近くなる子にも。体重1 kgあたり60〜75 mgを1日2回に分けて与える。副作用がなければ2〜3倍まで増量可能。 |
逍遥散(しょうようさん) | おすすめ度:★★★★★ 痛みを伴うストレス性の腸炎(IBD) 、嘔吐、食欲不振などの消化器症状のほか、分離不安、イライラ、攻撃・縄張り行動、元気消失の行動問題がみられる場合。与え方などの詳細はこちらから。 |
六君子湯(りっくんしとう) | おすすめ度:★★★★ 慢性的なストレスや不安症により下痢や嘔吐、食欲不振を繰り返し、体重の低下や貧血など全身症状の悪化がみられる場合。繰り返すストレス性腸炎(IBD)にも。体重1 kgあたり60〜75 mgを1日2回に分けて与える。副作用がなければ2〜3倍まで増量可能。 |
四妙散(しみょうさん)または三仁湯(さんにんとう) | おすすめ度:★★★ ストレス性胃腸炎があり、暑がりな子(水をよく飲む、日陰に隠れたがるなど)に。体重増加(肥満)、匂いがきつく脂っぽい皮膚炎や外耳炎、口臭、肛門嚢のつまり、膀胱炎などの既往があればこの漢方薬が最適。四妙散は非常に暑がる犬猫に、三仁湯は猫によく効く。体重1 kgあたり60〜75 mgを1日2回に分けて与える。副作用がなければ2〜3倍まで増量可能。 |
柴胡疎肝湯(さいこそかんとう) | おすすめ度:★★★ 飼い主のストレスに反応して不安行動を示したり、食欲不振、嘔吐、便秘、うつなどの症状を示す場合に。特に地タイプの犬に向いている。体重1 kgあたり60〜75 mgを1日2回に分けて与える。副作用がなければ2〜3倍まで増量可能。 |
乳酸菌 | おすすめ度:★★★★★ 普段与えている場合はそのまま継続。ビオフェルミンの場合は、猫・小型犬1錠(杯)、中型犬2錠(杯)、大型犬3錠(杯)。トライプを食事に混ぜても良い。詳しくはこちらから。 |
しょうが | おすすめ度:★★★ 胃腸を落ち着かせて嘔吐を抑制する。空腹時に与えると嘔吐や下痢を起こすことがあるので必ず食事と一緒に与える。手術を行う場合は与えない。詳しくはこちらから。 |
リコリス(甘草) | おすすめ度:★★★ ストレス性の消化管潰瘍・胃腸炎に。嘔吐や腹部膨満がある場合は使用しない。体重1 kgあたり乾燥粉末50〜120 mgを1日2〜3回に分けて与える。単独・高用量で長期使用しないこと。妊娠中・高血圧・低カリウム・胆汁うっ滞、肝硬変、慢性腎臓病・副腎皮質機能亢進症には使用しない。詳しくはこちらにも。 |
分離不安、イライラ、不適切な場所での排便・排尿、破壊行動などの行動問題は、部分的または全身的な循環の滞りが原因となっていることが多く、火タイプ・土タイプの犬猫によくみられるのも特徴です。常習化している場合は、効果が出るまで時間がかかる場合があります。しつけや環境の改善などと合わせて根気よい対策が必要。
サプリメント | 適応例・給与量 |
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補中益気湯(ほちゅうえっきとう) | おすすめ度:★★★ 緊張すると粗相をしたり、トイレが近くなる子に。体重1 kgあたり60〜75 mgを1日2回に分けて与える。副作用がなければ2〜3倍まで増量可能。 |
逍遥散(しょうようさん) | おすすめ度:★★★★★ 分離不安、イライラ、攻撃・縄張り行動、元気消失などの行動問題に。消化器症状や肝臓病の既往がある場合にも。与え方などの詳細はこちらから。 |
三仁湯(さんにんとう) | おすすめ度:★★★ 猫のストレス性の多飲や脱毛に。体重1 kgあたり60〜75 mgを1日2回に分けて与える。副作用がなければ2〜3倍まで増量可能。 |
柴胡疎肝湯(さいこそかんとう) | おすすめ度:★★★ 飼い主のストレスに反応して不安行動を示したり、食欲不振、嘔吐、便秘、うつなどの症状を示す場合に。特に土タイプの犬に向いている。体重1 kgあたり60〜75 mgを1日2回に分けて与える。副作用がなければ2〜3倍まで増量可能。 |
ジルケーンなどのカゼイン/αカソゼピン製剤 | おすすめ度:★ 不安症からくる行動問題に。加水分解されているが、牛乳から作られるため、牛乳アレルギーの子は注意が必要。与える量は説明書に従う。 |
バレリアン | おすすめ度:★★★ 興奮しやすい、または、神経質な子に。体重1 kgあたり乾燥ハーブ100 mgを1日2回。過剰量で逆に興奮することがあるため、少量から始め、長期の使用は行わない。肝疾患には使用しない。犬猫用としてバレリアン入りのおもちゃやスカルキャップと一緒にハーバルカーム・カーム&リラックスなどのサプリメントとして販売されている。 |
スカルキャップ | おすすめ度:★★★ 神経質な子に。体重1 kgあたり乾燥ハーブ100〜150 mgを1日2回。犬猫用としてハーバルカームやカーム&リラックスなどの製品にバレリアンと一緒に配合されている。 |
サプリメント | 適応例・給与量 |
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冬虫夏草(コルディセプス) | おすすめ度:★★★★ エネルギー(ATP)産生を促す。体重1 kgあたり菌糸体粉末として25〜500 mgを1日2〜3回に分けて与える。急性感染がある場合には使用しない。 |
エゾウコギ(シベリアンジンセン・エレウテロ) | おすすめ度:★★★★★ 働き過ぎた神経や内分泌系の疲弊や枯渇を抑制。体重1 kgあたり25〜400 mgを1日2〜3回に分けて与える。妊娠中は使用しない。その他の作用についてはこちらから。 |
オタネニンジン(高麗人参・パナックスジンセン) | おすすめ度:★★★★★ ストレス反応経路を正常化。強壮作用がある。体重1 kgあたり25〜300 mgを1日2〜3回に分けて与える。妊娠中・高血圧・出血傾向・便秘・寄生虫症には使用しない。その他の作用についてはこちらから。 |
ジメチルグリシン | おすすめ度:★★★★ 運動後の回復を促進し、免疫力を高める。小型犬50〜100 mg、中型犬100〜150 mg、大型犬150〜300 mg、超大型犬300 mg〜 |
CoQ10/L-カルニチン | おすすめ度:★★★★★ エネルギー産生を高めて酸化ダメージを抑制。心筋を保護。詳細、与える量はこちらから。 |
与えるタイミング
- ビタミンC・E・B群:ストレスが始まる1〜2日前から2〜3週間後まで
- ジルケーン、バレリアン、スカルキャップ、エキナセア:ストレス時のみ
- その他のハーブ・漢方薬:ストレスが始まる2〜3週間前から開始し、ストレス後も2〜3週間継続して与える。
サプリメント以外でできること
遊ぶ、運動する、人や動物と交流する、固いものを噛むなど、犬猫自身が楽しいと感じられることもストレスの影響を和らげることができます。何を楽しいと感じるかは一頭一頭異なります。例えば、犬同士よりも人との交流を好む犬をペットホテルに預ける場合、そういった機会を作ってくれる施設を探します。しつけ教室のように人との交流が増えるプログラムがあれば同時に申し込むのも一つの選択肢でしょう。
逆に独りで過ごすことを好む犬猫には持ち運びができる安全な隠れ家(ベッド、キャリー、ケージなど)を作ってあげることができます。
わんちゃんには、クラシック音楽を聞かせてあげることもできます。同じ音楽ばかりだとすぐに慣れてしまって効果がなくなるので曲を変えるのがコツ。最近では、猫ちゃんのための音楽も作られています。
論文紹介 | 猫も音楽でリラックス効果はまちまちですが、フェリウェイ(猫)、アダプティル(犬)など、猫や犬のフェロモンを利用したディフューザーやスプレーなども試してみる価値があります。
保護施設の動物の研究では、ラベンダー、カモミールのアロマに動物を落ち着かせる効果があることが示されています。
また、飼育環境や家族構成に変化があった場合は、遊びや散歩、スキンシップの時間を増やすことで環境の変化に早く慣れさせることができます。ここで重要なことは、ペットが鳴く、吠える、ものを壊す、噛むなどの行動を介して飼い主に訴えかけてから行動を起こすのではなく、その前に対策を行うことです。ペットの要求に応えて行動を起こすと、訴え行動が常態化し、ストレスがない時にもこのような行動を起こすようになる可能性があります。
- 動物病院で実際に処方されている量を掲載しています。一般的には非常に安全な量ですが、新しいサプリの与え始めには、まれにお腹がゆるくなる等の症状が現れることがあります。症状が続く場合は量を減らしてください。量を減らしても症状が続く場合は中止しましょう。溶解剤や添加物など、サプリに含まれている有効成分以外の成分も確認する必要があります。
- 空腹時に与えると気持ち悪くなることがあります。食事に混ぜるか、食後に与えるとよいでしょう。
- 基本的には、水溶性の成分は体外に排泄されやすいため毎日与えるのがおすすめです。油溶性・親油性の成分は、数日分まとめて与えることができます。
- 例外もあるため、獣医師または製品ラベルの指示にしたがって与えるようにしましょう。
- 動物病院で信頼のできる製品を処方してもらうか、GMP基準に従い品質管理をきちんと行なっているメーカーから購入しましょう。
- キシリトール、砂糖、乳糖などの甘味料、パラベンなどの防腐剤、ステアリン酸マグネシウムなどの添加物が不必要に使用されていないか確認しましょう。
食物アレルギーや不耐性がある場合、有効成分だけではなく添加物もチェックしましょう。犬猫用のサプリメントには味付けに牛肉・鶏肉・酵母エキス、乳糖などがよく使用されています。そのほかにも、フィラーとして米粉やトウモロコシ澱粉、脱脂粉乳、ソフトゲルカプセルに豚や牛、魚由来のゼラチンなどが使われていることがよくあります。
カプセルを残してしまう子は、中身を出して食事に混ぜましょう。錠剤は小さくカットします。液体カプセルの場合は、先端をカットして中味だけ与えます。室温に数時間置いておくと吸湿して柔らかくなり、切りやすくなります。
味にうるさい猫ちゃんは食事にサプリを混ぜると食事自体を嫌うようになることがあります。その場合は、食後に別に与えましょう。おやつやスープと混ぜたり、口に直接入れて与えます。喉にカプセルや錠剤がくっつくことがあるので、投与後にシリンジなどで水を飲ませてあげましょう。