食材の準備や量の計算など、ちょっとハードルが高そうに感じられる手作り食。でも最初からカンペキな食事を作る必要はありません。4〜5週間かけて必要なものを少しずつ取り入れていけば、飼い主さんにも犬猫にも無理なく切り替えることができます。
愛犬や愛猫が”本物”の食べ物を受け付けてくれるか心配な場合や、食事を変えるとお腹の調子が悪くなりやすい場合にもおすすめの方法です。
まずは主食になるお肉やお魚を食べてくれるか試してみましょう。
うちのコは食べてくれるかな?骨は犬猫のマルチミネラルサプリメント。野生の本能を満足させてストレス発散にも役立ちます。
ほんの少量ずつでOK。犬猫に必要なビタミンがぎゅーっと詰まってます。
体重やウンチの様子を確認しながら微調整すれば完成。
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1週目 ペットフードにお肉やお魚を混ぜてみよう
最初は脂身の少ない鶏肉、ラム肉、牛肉がおすすめです。数種類を混ぜても、1種類から始めても大丈夫。ひき肉や豚肉は生食には向いていないので避けましょう。お腹が弱い子は鶏のささみがおすすめ。皮や脂身を除いてから一口大に切って小分けし、冷凍します。3日以上たったら与えることができます。
お刺身を使います。最初はイカ・タコ・ホタテ・貝類は避けましょう。お腹の弱い子には淡白で脂肪分の少ない白味魚がおすすめです。
与える前日に冷凍しておいた肉を冷蔵庫に移します。刺身は新鮮なうちに使用。熱湯を少々かけて、室温〜体温程度まで温めたら、ペットフードに混ぜて与えます。
少量から始めて、問題がなければペットフードの半分の量まで増やしていきます。その分、ペットフードの量は少しずつ減らしていきます。胃腸が弱い場合や好みが激しい場合は1口ずつから始めましょう。
最初は脂身の少ない鶏肉、ラム肉、牛肉がおすすめです。数種類を混ぜても、1種類から始めても大丈夫。お腹が弱い子は鶏のささみがおすすめ。皮や脂身を除いてから一口大に切り、ごく少量の水でゆでます。数回分、まとめて作っておいてもいいでしょう。ゆで汁は飲み水に。
骨のない切り身を使用します。数種類を混ぜても、1種類から始めてもかまいません。最初のうちはイカ・タコ・ホタテ・貝類は避けます。お腹が弱い子は脂肪分の少ない白味魚から始めましょう。一口大に切り、ごく少量の水でゆでます。お肉と一緒に数回分をまとめて作っておくこともできます。ゆで汁は飲み水に。
室温〜体温程度まで冷めたら、ペットフードに混ぜて与えます。作り置きしておいた場合は、熱湯少々をかけて温めてあげましょう。
少量から始めて、問題がなければペットフードの半分の量まで増やしていきます。その分、ペットフードの量は少しずつ減らしていきます。胃腸が弱い場合や好みが激しい場合は1口ずつから始めましょう。
ほとんどの犬猫は問題なくお肉やお魚を受け付け、ペットフードを完全にやめていきなり切り替えても大丈夫ですが、生まれつき胃腸が弱い子や長年の合わない食事によって消化力が弱っていたり、全身の炎症が進行したりしている場合は、何らかの反応が現れることがあります。問題が2日以上続くようなら次のような対策を試してみましょう。
- 脂肪の少ない肉や魚を選び、一口程度のごく少量から試してみましょう。
- 複数の種類の肉や魚をいっぺんに与えず、1種類ずつ順番に試してみましょう。
- 生で与えた場合は、加熱調理食に切り替えてみましょう。特に夏場は食中毒が起こりやすいため衛生管理にも気をつける必要があります。
- 細かく刻んだり、ミンチにしてから与えてみましょう。ずっとペットフードを食べていた場合は、消化力が弱っている可能性があります。
- 赤肉よりも鶏肉、青魚よりも白味魚の方が、胃腸への影響が穏やかです。また、消化しやすくするためには、冷たいまま与えないことも重要です。
- 軟便だけが症状の場合は2週目の生骨を1週目から取り入れてみましょう。骨には、ウンチを硬くしてくれる作用があります。
- スリッパリーエルム 消化管の炎症を鎮め調子を整える。体重 1 kg あたり 20〜40 mg を 1 日2〜3 回。
- プロバイオティクス(乳酸菌) 犬猫用のものを購入し、説明書にしたがって与える。
以上を試しても症状が続くようなら、食物アレルギーや不耐症の可能性があります。給与を中止し、病院に相談しましょう。
ペットフードにはクセになりやすい添加物や香味剤が使用されているのが普通です。常習性のあるものをやめるのは、人間でも大変ですよね。何度か失敗してもあせらずに気長に取りかかりましょう。
- ほんの一切れ程度をペットフードの中に埋め込み、匂いを隠しましょう。かつおぶし、チーズなど、好きなものを混ぜ込んで匂いを隠すこともできます。食べてくれるものが見つかったら、少しずつ量を増やしていきます。
- フードの中に隠すと近寄らなくなる場合は、別皿に載せて近くに置いておき、時間をかけて新しいものの存在に慣らしていきます。
- 逆に匂いの強い肉や魚(内臓肉、イワシなど)に興味を示す場合もあります。3〜5週目の内臓肉や野菜、サプリメントから開始してもいいでしょう。
- ドライフードしか受け付けない場合は、ドライフード → 缶詰フード → 手作り食という順序で切り替えるとうまくいくことがあります。最初は生よりも調理食を冷まして与えるといいでしょう。
- いつでも食事ができるようフードを出しっぱなしにしておいた場合、まずは定時に食事を与え、時間になるとお腹が空くという習慣をつけましょう。
- 猫ちゃんの場合は、お肉やお魚をペットボトルの中に仕込んで、高いところや好きなところに隠すと、狩猟本能をくすぐることができます。
- 与える前日に半日〜1日絶食し、水のみを与えるようにします。お腹が空いていれば選り好みをしにくくなります。胃腸が弱っている場合も、絶食して消化管の中をからにすることで、自己修復を促すことができます。
- 監視せずに放っておくことも大切。特に猫ちゃんは独りで食事するのがもともとの習性です。放置しておいたらいつの間にか食べていたということがよくあります。どんなにひとなつこい子でも、プライバシーを守るようにしましょう。
- 動物は人の微妙な表情や声色を読み取る天才。思っているよりも私たちの感情が伝わっています。「きっとダメだろうな」と思いながら与えていると、いつまでも受け付けてくれないことがあります。
2週目 生骨や骨付き肉を足す
カルシウムや鉄、亜鉛などのミネラルを豊富に含む骨は、天然のマルチミネラルサプリメントの役割を果たします。また、ウンチが固めになるため、肛門嚢が適度に押されて、肛門嚢を絞る必要が無くなります。
成犬・成猫用。適切な骨の量は年齢、活動度、品種などにより一頭一頭異なります。ウンチを観察しながら量を調節しましょう。
- 猫・小型犬 鶏の手羽先・手羽元・ネック・脚、ラムのリブ ・関節、テールなど。柔らかめでかじりやすく丸のみしない大きさのもの。
- 中型〜大型犬 鶏レッグ、鶏背骨、牛リブ、テール(大きめ)、ラムショルダーなど。かじりやすく丸のみしない大きさのもの 。
- 骨は加熱すると割れた時に尖り、消化管を突き破ることがあるため、生で与える必要があります。
- 体の大きさと顎の強さにあった骨または骨付き肉を準備します。丸のみせずに時間をかけてかじり、完食できるものが最適です。
- 1回分ずつに分けて冷凍庫で3日以上保存します。3日経ったら与えることができます。与える前日に冷蔵庫に移して解凍しましょう。大きめの骨の場合は、温かい流水にさらして温めてあげてるとよいでしょう。毎日ではなく、2〜3日分ずつまとめて与えてもかまいません。
- 栄養価は落ちますが、ペット用のスモークボーンで代用することもできます。かじるためのものではなく、食べるための無添加ものを選びましょう。
- 初めて骨を与える際は、丸のみしないか、必ず観察するようにしましょう。
- 少なめの量から始め、少しずつ増やしていきます。
- 適量は目で確認することができます。量が多過ぎると、翌日のウンチが白っぽくカチカチになり、便秘することがあります。便秘せず、ウンチが適度に硬くなる量が最適です。
- 丸飲みしても喉に詰まっている様子がない場合は、そのまま様子をみましょう。大抵は、自然に消化されます。消化できなかった部分だけ、あとで吐くことがあるかもしれません。丸飲みした骨は今後与えないようにしましょう。
- 顎や歯に引っかかっている場合は、上顎を一方の手で、下顎をもう一方の手で持ち、口を大きく開けて中を確認します。唇を歯にかぶせるようにして持つと、犬猫が噛もうとしても怪我をする危険性が少なくなります。手でとれない場合は、スプーンなどの尖っていないものを差し込んで外します。フォークやナイフは危険なので使わないように。犬や猫がパニックになり、口の中を見せようとしない場合は、すぐに病院に連れていきましょう。
- 喉につかえていて、取り出せない場合は、お腹を押して吐き出させます。猫や小型犬の場合は、お腹を上にして片方の腕で抱くか、横に寝かして片方の手で背骨を支え、もう片方の手のひらを肋骨の下のお腹の部分に当て、頭の方向に向かって押します。中型犬〜大型犬の場合は、立ち姿勢のまま、肋骨の下方のお腹の部分に両腕を回し、両手をしっかりと握ったら、前方(犬の頭の方向)に向かって犬を持ち上げるようにしてお腹に圧迫を加えます。立てない場合は、片方の手で背中を支え、もう片方の手でお腹を押し上げるようにします。数回試しても吐き出さない場合は、すぐに病院に連れていきましょう。
3週目 内臓肉と卵を足す
内臓肉や卵は、肉や魚、骨だけでは補えないビタミンを豊富に含んでいます。内臓肉と卵を与えるようになったらもうペットフードは必要ありません。内臓肉や卵を加えながら、下記の目安量までお肉の量を増やし、ペットフードを与えるのはやめましょう。
標準的な成犬・成猫用。食事の量は年齢、活動度、品種などにより一頭一頭異なります。定期的に体重を測って量を調節しましょう。
手作り食ではなかなか補えないセレンが豊富。匂いが気になる場合は、大きめにカットして、冷蔵庫内で一晩水に浸けておくと、臭みが取れます。
消化酵素や乳酸菌を豊富に含むグリーントライプ(牛、羊など反芻動物の胃袋)、タン(舌)、フワ(肺)、脳みそなども、手に入れば挑戦してみましょう。
- 内臓肉を生で与える場合:1回分ずつ小分けして、冷凍庫で3日以上保存します。3日経ったら与えることができます。与える前日に冷蔵庫に移して解凍し、熱湯少々をかけて温めてから与えます。数日分ずつまとめて与えても大丈夫です。
- 内臓肉を調理して与える場合:ごく少量の水で軽くゆでます。加熱しすぎると、ビタミンが壊れてしまうので気をつけましょう。調理中に溶け出す成分が多いので、ゆで汁ごと与えることも大切です。
- 卵:卵黄は生のままでも大丈夫ですが、卵白を生で与えるとお腹がゆるくなることがあります。最初は固めに調理しましょう。
内臓肉が手に入らない場合は、他の食材やマルチビタミン・ミネラル剤を利用する必要があります。
自分の犬猫にどれだけのビタミンが必要かを確認し、ちょうどいい量のサプリメントを見つけるか、別の食品で代用します。下のリンクから自分の犬猫に必要な栄養素の量やどのような食材が使えるかを確認しましょう。
- 生で与えた場合は、加熱調理に切り替えましょう。特に夏場は食中毒が起こりやすいため衛生管理に気をつける必要があります。
- 量が多すぎないかもう一度確認しましょう。特にレバーと卵の与えすぎには注意が必要です。
- 数日分まとめて与えた場合は、1日分から始めてみましょう。
- ウンチがゆるい場合は、骨の量を増やすと固めになります。
- ごく少量から始めて、徐々に慣らしていきましょう。
- どうしても内臓肉を受け付けない場合は、マルチビタミン剤を利用する必要があります。上の「内臓肉が手に入らない場合」を参考にしてください。
4週目 海藻(ヨウ素)・オメガ3脂肪酸・タウリン・ビタミンE
3週目まで無事に終えたら、バランスの取れた食事がもうほとんどできあがったようなもの。唯一足りない必須栄養素はヨウ素です。海藻やサプリメントで補いましょう。
魚を与えていない場合はオメガ3脂肪酸、卵を与えていない場合はビタミンEも足りないかもしれません。合わせて補うようにしましょう。
タウリンは猫ちゃんに必ず与える必要がある栄養素です。主食(肉、魚、内臓肉)でも補うことはできますが、食品中に含まれる量の変動が大きく、保存・調理中に壊れてしまうため、確実な量を与えるにはサプリメントの利用がおすすめです。
ヨウ素の給与量を急に変えると甲状腺に影響する場合があることが報告されています。今まで与えていたペットフード中のヨウ素量を確認し、同じ量からスタートしましょう。問題がなければその量を維持するか、少しずつ上の推奨量に近づけていきます。食品中のヨウ素の量は季節や産地によって大きく変わるため、一定量を確実に与えられるサプリメントの使用もおすすめです。
DHAとEPAを合わせた量で計算します。週に数回、イワシや鮭、サバなどのDHAとEPAが豊富な食材を取り入れている場合はサプリメントを必ず与える必要はありません。
サプリメントを使用する場合は、大量に与えるとお腹がゆるくなったり吐いたりすることがあります。少量から始めて、少しずつ増やしていきましょう。また、手術の予定がある場合は、1週間前から給与を中止します。非常にまれですが、出血しやすくなる、傷口が治りにくい、などの副作用が現れることがあります。
うちのコに合うオイルはどれ?(動物性油脂編)5週目 いろいろな野菜や果物、穀類を試してみる
基本的に肉食である犬と猫には植物性食品を必ず与える必要はありません。でも野菜や果物には抗酸化、抗炎症、免疫調節などの作用があるフィトケミカルが多くが含まれており、犬にも猫にも効果があることがわかっています。
犬には食事全体の3割〜5割まで、猫には1〜2割程度まで足してあげることができます。少量から始めて少しずつ増やしていきましょう。猫ちゃんは植物性繊維の消化がうまくできないので、細かく刻んだり、ピューレにしてあげます。
野菜は切って与える?それともミキサーで混ぜる?米や小麦、トウモロコシなどの穀類や芋類も必要に応じて使用することができます。
炭水化物ガイド6週目以降 微調整を行う
5週目までクリアしたら、あとは1頭1頭の状態に合わせてバランスを整えるだけです。体重や便通、毛並み、体調などを観察しながら食事の量や内容を微調整しましょう。
食事の切り替え期は、週1回体重測定を行い、食事の量が適切かどうか確認しましょう。基本の食事量が決まり、体重が安定したら1ヶ月に1度の測定で大丈夫です。
食事の切り替え時には、ウンチやおしっこの様子が変化することがあります。
- 便の固さと形状:形がしっかりとしていて、固すぎず、柔らかすぎずが理想的です。
- 便の回数:切り替え期を過ぎたら1日1〜2回に落ち着くのが普通です。切り替えてから何週間経っても毎日お通じがなかったり(便秘)、逆に多すぎる場合(腸炎)は、食事の内容を見直す必要があります。
- 便の色:食事内容によって変化するので、下痢をしていない限りは気にする必要はありません。例えば、赤肉やレバーを取り入れると黒っぽくなり、鶏肉や魚を与えた翌日は黄色っぽくなります。
- 尿量・飲水量:本物のお肉やお魚の半分以上は水分なので、手作り食に切り替えると、水を飲む量やおしっこの量が変化することがあります。朝食前の早朝尿のpHは、猫で6.0〜6.5、犬で6.0〜7.0程度で落ち着くのが普通です。食後に尿検査を行うとpHがアルカリ性に傾きます。
基本の食事量がわかったら、新しいサプリや食材にもどんどん挑戦して、楽しみながらアレンジを加えていきましょう。同じ食材ばかりに偏らず、いろいろな種類を取り入れるようにすると、栄養素の不足や過剰を防ぐことができます。
例えば、胃腸に優しい鶏肉は切り替え期におすすめの主食ですが、ずっと鶏肉ばかりだと、鉄分やビタミンD、ビタミンEが不足するようになります。鉄分が豊富な赤肉やビタミンE・Dが豊富なイワシ、鮭などの魚を取り入れて補っていく必要があります。逆に魚ばかりだと、ビタミンDが過剰になり、亜鉛や銅などのミネラルが不足する傾向にあります。
鶏肉、赤肉、青魚、白味魚と異なる種類の食材を組み合わせると、サプリメントもそれほど必要なく、栄養バランスに優れた食事になります。
生で与える場合は、鶏の皮やお肉の脂肪分も少しずつ増やしてあげましょう。鶏皮は動物性繊維、脂肪は脂溶性ビタミンを含んでいます。ただし、脂肪分は加熱調理すると酸化し、膵炎などを起こしやすくなるので注意が必要です。
手作り食で不足しやすい栄養素
栄養バランスの最終チェックを行いましょう。特に内臓肉や骨、卵を与えない場合に重要なステップです。
これが基本!健康を守るためのワンちゃんの食事バランスこれが基本!健康を守るための猫ちゃんの食事バランス本ページの自動計算機は標準的な成犬および成猫を基準にしており、すべての犬猫に同じ数値が当てはまるわけではありません。例えば、同じ5 kgの犬でも、犬種、去勢避妊の有無、年齢、運動量等によって必要なカロリーが変わり、それに伴って必要な栄養素の量も異なってきます。表示された量を開始点とし、犬猫の体重や体質に合わせて調節するようにしましょう。