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六味地黄丸(六味丸)とは
六味地黄丸(ろくみじおうがん)は、6種類の生薬からなる補陰剤です。腎臓の弱りを助けて全身の水分循環を整えると同時に、血行を穏やかに促す作用があり、犬と猫では主に慢性腎臓病(腎不全)の治療や高齢期のアンチエイジングケアに用いられます。
高齢期の健康は腎臓がカギ
漢方医学において腎は、現代医学でいう腎臓だけではなく副腎や尿路生殖器系を含む包括的な概念であり、生命の源である「精」を蓄え、水分代謝や内分泌系を司る大切な器官と考えられています。
腎精は年齢とともに減っていき、その量は寿命を決めるといわれています。一方で、腎は潤い(腎陰)を巡らせ、ホルモンや抗炎症物質を体のすみずみまで行き渡らせています。腎陰には、活発に運動する心臓から発生する熱と混ざりあうことで上半身に集まりやすい熱を鎮め、冷えやすい下半身を温めるという役割もあります。加齢など何らかの原因によって腎臓の機能が低下すると、腎陰が不足し、皮膚や被毛が乾燥するほか、上半身には動悸、パンティング、落ち着きがない、口渇、前庭疾患といった熱の症状が、下半身には足腰が弱る、尿量が増える、尿が薄くなる、尿失禁を起こすといった冷えの症状が現れるようになります。
六味地黄丸の役割
「腎陰を補う」「腎精の漏出を防ぐ」「血液を補う」「水分代謝を改善する」「熱を冷ます」「消化器をいたわり食物から精や陰を作りやすくする」といった作用をもつ6種類の生薬がバランスよく配合されており、年齢とともに弱っていく腎臓の機能を助け、滞りがちな体液や血液の巡りを改善することで全身の老化の進行をゆるめるのに役立ちます。
主成分である地黄には、虚血などのさまざまなダメージから腎臓を守る腎保護効果、アンジオテンシン受容体の発現抑制、血圧調整、血清クレアチニン濃度の低下、抗血栓、腎線維化促進因子の抑制、骨髄における赤血球の産生を促す、赤血球の正常化、抗腫瘍、血糖降下など、さまざまな作用があることが人や動物、培養細胞の研究から報告されています。
ジオウ サンシュユ サンヤク タクシャ ブクリョウ ボタンピ
用量・用法
- 体重 1 kg あたり 60〜75 mg から開始し、1日2回に分けて食事とともに与える。副作用がない場合は、用量を2〜3倍まで増やしてもよい。
- 冷えの症状(寒がるなど)が生じたら、八味地黄丸に切り替える。
- 2〜3週おきに症状を確認し、その都度、処方を調節する。
- 長期投与可能。
適応
- プレシニア〜シニア期のアンチエイジングに
- 上半身が熱く、下半身が冷える「上熱下寒」に
- 冷えよりも熱の症状が気になる慢性腎臓病(腎不全)に
こんな症状が気になるときに…
上半身の症状
- 口渇・水をよく飲む
- 耳が遠くなった
- イライラ
- パンティング
- 夜落ち着きが無くなった
下半身の症状
- 頻尿
- 尿の色が薄くなった
- 尿失禁
- 足腰に力が入らなくなった
- 腰痛
その他の症状
- 暑い場所を嫌がる
- 暑い日に運動できなくなった
- 皮膚や被毛の乾燥
- 細かく乾いたフケ
- 食欲が増えた
よく使われる疾患
腎泌尿器系
- 慢性腎臓病(腎不全)
- 尿失禁
加齢性疾患
- 難聴
- 慢性の乾いた咳
- 皮膚・被毛の乾燥
その他
- 糖尿病
- 甲状腺機能亢進症
- 副腎皮質機能低下症
地黄剤の使い分け
- Lee BC, Choi JB, Cho HJ, Kim YS. Rehmannia glutinosa ameliorates the progressive renal failure induced by 5/6 nephrectomy. J Ethnopharmacol. 2009 Feb 25;122(1):1131-5.
- Wynn SG, Marsden S. Manual of Natural Veterinary Medicine. Science and Tradition. Mosby 2002.
- Zhang RX, Li MX, Jia ZP. Rehmannia glutinosa: review of botany, chemistry and pharmacology. J Ethnopharmacol. 2008 May 8;117(2):199-214.