獣医師による手作り食・自然療法ガイド

ビタミンB群

 水溶性ビタミン  活力  神経  代謝・合成

ビタミンB群は、8種類の水溶性ビタミンの総称で、食物からエネルギーを作り出したり、細胞の産生や維持に必要な酵素を助ける補酵素として働きます。

ビタミンB12以外は体内に貯蔵することができず、余剰分は体外へ排泄されてしまうため、毎日の食事で摂取するのが理想的。また、熱によって壊れやすいため、加熱調理食を与えている場合は特に気をつける必要があります。

内臓肉を与えていれば不足することなし。加熱食で要注意。

ここでは、手作り食で特に不足しやすいビタミンB1(チアミン)と大切な機能をもつビタミンB6について解説します。

ビタミンB1(チアミン)

ビタミンB1(チアミン)は、炭水化物をエネルギーとして利用するのに必要な補酵素です。食事中の炭水化物量が多いほど、必要量が増えます。豚肉、内臓肉、小麦胚芽、酵母など、さまざまな食品に含まれていますが、高熱に非常に弱いため、加熱調理した手作り食を与えている場合は、別に補給する必要があります。また、魚の内臓にはチアミンを分解する酵素チアミナーゼが含まれているので生で与えないようにしましょう。ハムなどの加工肉の保存に使われている亜硫酸塩もチアミンを壊します。

チアミンは、神経細胞に多く分布し、脂肪酸、核酸、ステロイド、アミノ酸などの代謝にも関わっているため、チアミン欠乏症の症状は、食糞から体重低下、運動失調、神経系や心血管系の異常まで多岐にわたります。特に猫では犬の2~5倍量のチアミンが必要なので、気をつけてあげましょう。

チアミン欠乏症

ビタミンB6(ピリドキシン)

ビタミンB6(ピリドキシン)は、神経系、たんぱく質の代謝や合成、赤血球の生成、免疫、認知機能などに必要な成分です。内臓肉、魚、小麦胚芽、酵母などに含まれています。欠乏により、貧血、筋力の低下、けいれんなどの神経症状、皮膚病、シュウ酸結晶尿(猫)、腎損傷などさまざまな障害を起こします。

給与量の目安(1日分)

体重 5 kg 10 kg 15 kg 20 kg 25 kg
ビタミンB1(目安) 0.2 mg 0.4 mg 0.5 mg 0.6 mg 0.7 mg
ビタミンB6(目安) 0.14 mg 0.24 mg 0.32 mg 0.4 mg 0.47 mg

体重 3 kg 4 kg 5 kg 6 kg 7 kg
ビタミンB1(目安) 0.3 mg 0.3 mg 0.4 mg 0.5 mg 0.5 mg
ビタミンB6(目安) 0.19 mg 0.24 mg 0.28 mg 0.32 mg 0.36 mg

※避妊去勢済み・普通の運動量の場合。給与量は、ライフステージ、運動量などによって変わります。こちらのページから正しい量を確認しましょう。

他のビタミンBは、体内で合成できるか、食品中に十分な量が含まれているため、不足することはまずありません。加熱食を与えている場合にのみ注意しましょう。

食品中のビタミンB1・B6(参考)

食品(100 g 中) ビタミンB1(mg) ビタミンB6(mg)
乾燥酵母 8.81 1.28
米ぬか 3.12 3.27
小麦胚芽 1.82 1.24
豚赤肉 0.8〜1.3 0.54
マグロ赤身 0.03 1.08
乾燥バナナ 0.07 1.08
レバー 0.2〜0.4 0.6〜0.9
マメ腎臓肉 0.3〜0.5 0.4
ハツ(心臓肉) 0.2〜0.4 0.2〜0.3
乾燥まいたけ 1.24 0.28

ビタミンB1 ➜ 食品換算

ビタミンB6 ➜ 食品換算

ビタミンBサプリメント

ビタミンB欠乏症は、一部の項目をのぞいて血液検査などで測定することができないため、食事分析や症状、サプリメントへの反応をみて診断します。

ビタミンB不足かな?と思ったら

どのビタミンBが不足しても似たような症状が出ることがあるため、ビタミンB群すべてを補えるサプリメントを利用しましょう。

ビタミンBサプリメントの例
  • ビタミンBコンプレックス
  • ビタミンB群
  • ビタミンBミックス
  • ニュートリショナルイースト
  • 酵母サプリメント(ビール酵母、トルラ酵母、醸造酵母など)
  • 貧血対策サプリメント(分とB群が一緒に配合されていることが多い)

ビタミンB群は水溶性なので、多めに与えても大丈夫です。ただし、ビタミンB群以外の配合成分についても、きちんと確認を行いましょう。

ニュートリショナルイーストや酵母系サプリメントは、マラセチアなどの真菌感染症アレルギーを起こしやすい犬猫、腎臓病の犬猫では気をつける必要があります。サプリメント中の酵母が感染症を起こすのではなく、酵母が好む栄養素がそのまま含まれていることがあり、真菌感染が長引くことがあります。また、リンの含有量が高いため、腎臓病の場合は用量に気をつけましょう。

効果が高いのは内臓肉!

内臓肉給与ガイド

豆知識

B1とB6以外のビタミンBは与えなくてもよいの?

B2(リボフラビン)、B7(ビオチン)、B9(葉酸)、B12(コバラミン)は、腸内細菌が合成してくれるので食事と合わせれば不足することはありません。

B3(ナイアシン)については、犬は自分で合成することができます。猫では合成能が低いので食事で摂取する必要がありますが、主食であるお肉をきちんと与えている限り十分な量を補うことができます。

B5(パントテン酸)はありとあらゆる食材に含まれているため、やはり不足することはありません。

ビタミンB群は熱に弱いので、加熱調理食を与えている場合はサプリメントで補うとよいでしょう。

MEMO
  • 重度の胃腸疾患、腸切除後、膵外分泌不全、膵炎、SIBOなどではビタミンB群の合成・吸収障害が起こりやすくなります。重度の場合は、食事ではなく注射剤での治療が必要です。
  • シャーペイ、オーストラリアン・シェパード、ビーグル、ボーダーコリー、ジャイアント・シュナウザー等、一部の犬種では遺伝性のコバラミン欠乏症が知られています。