人も犬猫も家族みんなで楽しむごはん
犬と猫は野菜の消化がちょっと苦手。人間と比べると食物繊維のβ-グリコシド結合を分解する消化酵素をあまり持っていないのです。野菜のビタミンや抗酸化成分をしっかりと吸収してもらうためには、みじん切りにしたり、ミキサーにかけるといった工夫が必要になることがあります。
野菜は切って与える?それともミキサーで混ぜる?もう一つの方法が野菜を発酵させること。つまりお漬物です。もともと野菜についている善玉菌を増やし、善玉菌に食物繊維を消化してもらうのです。野生時代の犬と猫は狩りで捕獲した獲物の消化管内で半分消化された野菜や果物を食べていたので、この状態にとても近くなります。
とはいっても人用のお漬物は塩分が多すぎるのが問題点。塩は悪玉菌の増殖を抑制して野菜が腐らないようにする保存剤として使われています。
でも、塩を使わずに悪玉菌を抑制する方法があります。それは、善玉菌が増殖するのを待たずに最初から大量投入すること。善玉菌は乳酸や酢酸を生成するので、漬け汁のpHが急速に下がり、悪玉菌が増殖しにくい環境を早く作ることができます。今回は Wholly Vet のスタッフ全員が共有しているレシピをご紹介。私たち人間も食べることができます。
時間:準備40分・仕込み3〜7日 犬レシピ | 猫レシピ | 作り置き | 人犬猫共通 | 善玉菌
材料(1リットル分)
仕込み液の準備
仕込み用の善玉菌を準備します。次のうち1つがあればOK。
- ザワークラウトなど、自然食品店で購入できる塩分が少なめの自然発酵食品を利用。殺菌されていないものを選ぶ。漬け汁1/2カップ分をとっておく。
- 生菌が入った無糖ヨーグルトの上澄み(乳清)1/2カップ。ザルをボウルの上にのせ、ペーパータオルまたはチーズクロスを敷き、ヨーグルトを入れてラップをかけ、冷蔵庫に数時間から一晩置いておく。ボウル内に溜まった液を使う。牛乳アレルギー、乳糖不耐症の場合は使わないこと。
- プロバイオティクスサプリメント3〜5カプセル。乳酸菌など複数種類の生菌を含むサプリメントを利用。添加物を含まないパウダー状のものがよい。
- 室温で発酵するタイプのヨーグルト種やケフィア種でもうまく作れたという飼い主さんからの報告あり。一味違った仕上がりになるそう。
- 低塩または無塩の発酵野菜を常備している料理好きの友人に漬け汁を1/2カップほど分けてもらう。
セロリを洗い、ジューサーにかけるか、ミキサーにかけて裏ごししてジュースにします。これを善玉菌と混ぜ、仕込み液として使います。サプリメントやヨーグルト種を使った場合は、水を足す必要があるかも。水は浄水器に通すか、煮沸して冷ましたものを使用。
昆布、ケルプなどの海藻1/8〜1/4カップを足すこともできます。無塩ではなく低塩になりますが、ナチュラルな塩分で悪玉菌の増殖を抑えて、ミネラルも補給できます。
保存容器の滅菌
- ガラス容器とフタを洗剤で洗う。
- 鍋にガラス容器を入れ、かぶるくらいの水(またはお湯)を入れて沸騰させる。
- 耐熱素材のフタは、この時に一緒に入れてもよい。
- 10〜15分煮沸する。すりこぎやトングの先も入れて一緒に消毒するとよい。
- トングを使って取り出し、ペーパータオルなどにのせて冷ます。熱いので気をつけること。
- 耐熱性ではないフタやパッキンは火を止めたあとに入れ、10分ほど置く。
仕込み
- 人参を洗って皮をむき、細切りにする。
- キャベツは外側1枚をはがし、水でよく洗って瓶の口の大きさに合わせて切っておく。残りは表面を水洗いして、千切り〜細切りに。
- 切った野菜を混ぜ合わせて容器の半分くらいまで入れる。仕込み液を野菜が浸るくらいに入れて、すりこぎなどで押す。さらに野菜と仕込み液を交互に加えて、すりこぎで押しながら、できるだけギュウギュウに詰めていく。押しつぶすことによって野菜の水分が抜けやすくなる。
- 野菜全体が仕込み液に浸るようにする。仕込み液が足りない場合は、浄水器を通した水か煮沸して冷ました水を加える。
- 最後にとっておいたキャベツの葉を上からかぶせる。
- フタをする。発酵中にガスが出るので、きつく締めすぎない。一旦、ぎゅっと締めてからちょっと戻すくらいがちょうどいい。
発酵させる
- 15〜20℃の定温が保てる暗所に保管。夏はクーラーボックスなどを利用。温度が低いほど時間がかかるが悪玉菌ではなく善玉菌が増えやすくなる。
- 1〜2日目くらいから小さい泡が現れる。泡は時間とともに大きくなり、野菜が押し上げられることも。その後、泡は出なくなり、野菜は下の方に戻る。
- 夏は3〜4日、冬は1週間ほどで出来上がり。
- 仕上がりを確認したら冷蔵庫に移して保存。3〜4週間以内に使い切る。
仕上がりを確認
成功!
- やや甘酸っぱい香りがするが、腐敗臭はない
- 野菜はしんなり、でもシャキシャキ感が残っている
- カビが生えていない
失敗!
- 臭い
- 野菜の形が崩れていたり、ドロドロになっている
- カビが生えていたり、表面に膜ができている(酵母膜)
- ティカ カルキ・伊藤 寛「無塩発酵漬物の改良開発:グンドルックとスンキ漬」化学と生物 26 巻 (1988) 5 号 p. 325-329
- Katz SE “The Art of Fermentation” (2012) Chelsea Green Publishing, White River Junction, VT.