腸とアレルギーの関係
アレルギーは、免疫系のバランスが崩れることにより、本来なら反応しなくてもよい物質に過剰に反応を起こすようになった状態です。
この免疫系の70〜80%を占めているのが腸。免疫系全体のバランスを整え、アレルギー症状を完全に抑えるには「破綻した腸の免疫系の修復」が重要なポイントになります。
食物アレルギーの場合、多くは「未消化の食べ物」が原因で起こります。腸管が健康な場合は、食べ物は効率よく消化され、食物が未消化のまま残ってしまっても吸収されることはなく、ウンチとして排泄されるため問題は起こりません。しかし、消化管に炎症や損傷などの異常が生じると、消化効率が落ちて未消化の食べ物が増えるだけでなく、食べ物が腸壁を通り抜けて腸に隣接する免疫組織を刺激するようになります。
こういった刺激が軽度な場合や一時的な場合は、免疫組織がうまく対処できるため、アレルギー反応は起こりません。しかし、ストレスで胃腸機能に障害が生じたり、アレルギー物質が大量に入ってくると、免疫機能が破綻し、アレルギー反応が起こるようになります。
全身の免疫系は免疫細胞やシグナル分子を通して連絡しあっているため、このような腸管免疫系への刺激が長く続くと、全身の免疫系も過敏な状態になり、呼吸や皮膚を介して入ってくる食物以外のアレルギー物質(花粉やノミ、ハウスダストなどの環境アレルゲン)にも過剰な反応を起こすようになります。
食物アレルギー、環境アレルギー、ノミアレルギーなど複数のアレルギーが併発しやすいのは、これが理由です。
アレルギーの閾値説と加算効果とは
アレルギーの治療でもう一つ重要なコンセプトにアレルギーの閾値というものがあります。閾値(限界)を上回る量のアレルギー原因物質(アレルゲン)が体内に入ってくると、アレルギー症状が始まるという考え方です。
例えば、右の図で食物アレルゲンをA、環境アレルゲンをBとすると、少量のAまたはBが単独で体の中に入ってきても、アレルギー症状は起こりません。しかし、AとBが同時に存在する場合、双方の量を合わせると閾値を超えてしまうため(加算効果)、症状が出るようになります。
閾値の高さには個体差があり、生まれつき閾値が低い子もいれば、食事やストレス、病気などさまざまな要因が理由で閾値が下がってしまう子もいます。
つまり、アレルギーの実際の原因だけではなく、(1)他のアレルゲンもできるだけ取り除くことでアレルゲン全体の量を低く保つこと、(2)サプリメントや食事療法など全身のバランスを整える治療で閾値を上げることの2つがアレルギー治療の目標となります。腸の修復は、このいずれにも役立ちます。