腹水はお腹の中に体液が漏れ出してしまった状態。肝胆疾患では主に次の理由で生じます。
- 門脈高血圧:消化器から肝臓に流れこむ血管の血圧が上昇し、水分が漏出するようになった状態で、先天性の血管異常、腫瘍、血栓形成、肝硬変(線維化)、心肺疾患の併発などさまざまな原因でおこる。
- 低アルブミン血症:肝臓で作られるアルブミンは血管からの水分の漏出を防ぐ役割があり、肝機能が大きく損なわれるとアルブミンが作られなくなる。リンパ管拡張症や漏出性腸疾患でもアルブミン値が低くなる。
- がん:リンパ液や血管の流れを阻害したり、腹膜に転移して起こる。
- 胆嚢破裂に続発。
かかりつけの病院で腹水の検査を行い、他の検査結果や病歴と合わせて原因を絞り込み、可能なかぎり原因の治療を行います。
食事療法で気をつけること
食塩(ナトリウム)を制限
塩分は体内の水分貯留を促します。腹水が溜まっている間は、食塩の使用をやめ、塩分が高い食材(味噌、しょうゆ、干物など主に人用の加工食品)を避けるようにしましょう。お肉、お魚、野菜に自然に含まれるナトリウムは気にする必要はありません。
タンパク質摂取量を再チェック
食事中のタンパク質量を制限しすぎると、アルブミンの材料であるアミノ酸が足りなくなります。最小必要量のタンパク質を必ず与えるようにし、調子が良いようなら、タンパク質の量を少しずつ増やしていきましょう。
注意
末期の肝臓病ではタンパク質をいくら与えても肝臓にアルブミンを作る力自体がもう残っていません。この場合、タンパク質摂取量を急に増やすと、逆に肝臓に負担をかけ、肝性脳症を起こしやすくなります。かかりつけの獣医師とよく相談し、今どの段階にあるのかを見極めてもらうことが大切です。これまでの検査結果や症状の変化を経時的にみて判断してもらいましょう。ビタミンB群の摂取量を増やす
利尿剤の使用などにより、水溶性ビタミンが失われやすくなります。必要量の倍以上を与えるようにしましょう。食品だけで補うのは難しいため、サプリメントの利用がおすすめです。
ビタミンB群漢方薬
利尿作用により腹水を緩和する漢方薬
- 胃苓湯(いれいとう):胃腸を整えることで肝臓の滋養強壮に役立つ。主に利尿作用によって腹水を緩和するが、肝臓の機能を高めることで間接的にアルブミンの生成を促す。リンパ管拡張症や腸炎の既往や併発がある場合にも使うことができる。利尿剤、他の漢方薬と併用可能。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):慢性肝臓病の腹水に。利尿剤、他の漢方薬と併用可能。
- 茵蔯五苓散(いんちんごれいさん):黄疸が併発する場合に。
- 五苓散(ごれいさん):当帰芍薬散との併用で腹水・肝再生の両方をケア。黄疸がなく、利尿剤に反応しない心不全が併発する場合にも。
アルブミンの生成を促す漢方薬
MEMO
漢方薬よりも弱いですが、ダンデライオン、パセリ、ミルクシスルなどのハーブにも利尿作用やアルブミンの生成を助ける作用があります。