獣医師による手作り食・自然療法ガイド

肝胆疾患の食事バランス

タンパク質

肝臓の再生とアルブミンなどの生理活性物質の合成に必要な量を与える

ダメージを受けた肝臓の修復や新しい肝細胞の生成には、タンパク質が必要です。健康な時と同じ最小限必要なタンパク質量を必ず確保しましょう。

タンパク質量の目安(犬・猫)

体重 1 kg あたり 4 g 以上

計算機で正確な量を調べる

注意肉や魚などの重さではなくタンパク質の重さです。子犬、子猫、体重3 kg未満または20 kg以上の成犬は計算機で正確な量を調べましょう。自動計算機を使うと、必要な肉や魚の量も知ることができます。

肝臓の再生期には、健康なときよりもタンパク質の必要量が増えます。血液検査結果や症状が落ち着き、安定化したら少しずつ増やしていくのがおすすめです。

肝性脳症を起こしていない限り、タンパク質を制限する必要はありません。


レバーは最大の薬膳食材

レバーには肝臓が合成・貯蔵を行なっている生理活性物質やビタミン、肝臓の機能や活動、遺伝子発現に必要なシグナル分子や酵素など、さまざまなものが含まれています。ごく少量で弱った肝臓の負担を和らげ、機能をサポートしてくれます。牛、豚、鶏、鹿など、手に入るものならなんでもOKですが、適量を守るようにしましょう。

適量の目安は体重の0.1〜0.3%です。この量だと肝臓病で蓄積しやすい銅やが過剰にならず、家畜に投与された薬物の影響を受けずに十分な薬膳効果を出すことができます。入手できればオーガニック製品がおすすめです。軽くゆでるか表面だけ焼きます。加熱しすぎないよう注意してください。

レバーの適量

体重 1 kg あたり1〜3 g


赤肉・赤身魚は控えめに

赤肉や赤身魚(カツオ・マグロ)は肝臓病で蓄積しやすい芳香族アミノ酸、分解時に肝臓による解毒が必要なアンモニアを生成するヘムの量が多めになっています。軽度の肝障害で特に症状がない場合は、赤肉を今までの半分程度に減らしてみましょう。肝障害が重度の場合は、レバー以外の赤肉を一切やめ、白身魚などを中心にします。肝臓病では分が蓄積しやすいため、不足を心配する必要はありません。


おすすめのタンパク質源

  • 白身魚
  • 鶏肉
  • 卵(主食ではなく部分的に置き換える)
  • 豆腐(主食ではなく部分的に置き換える)

炭水化物

肝臓にはエネルギーがグリコーゲンとして貯蔵されており、体内でエネルギーが不足すると糖に変換されて全身に運ばれます。肝障害が進行するとグリコーゲンの貯蔵量が減るため、エネルギー不足に陥りやすく、代わりに体組織(タンパク質)が分解されてエネルギーとして使われるようになります。体組織の分解は有害なアンモニアを生じ、このアンモニアを解毒するのも肝臓の仕事です。

体組織の分解を防ぎ肝臓の負担を減らすために、グリコーゲンの代わりになる炭水化物でカロリーを補助してあげましょう。

炭水化物の割合(犬)

タンパク質食品の 1〜2倍

炭水化物の割合(猫)

タンパク質食品の半量〜同量 

重さ、または見た目のおおよその量で大丈夫です。最低必要なタンパク質量を確保しながら、体重を維持できるよう炭水化物の量を加減していきます。

おすすめの炭水化物食品

肝臓や胆嚢の病気では炎症が進行しています。これ以上炎症を加えないよう、上手に炭水化物食品を選ぶようにしましょう。グルテンやレクチンの多い食材は避けるようにします。

グルテンフリー・レクチンフリー

  • さつまいも(蒸すかゆでる)
  • きび・ひえ・あわ(炊飯器で炊く)
  • ソルガムのパスタ・マカロニ(ゆでる)
  • 里芋・長芋・山芋・タロイモ(蒸すかゆでる)

グルテンフリー

  • 白米・玄米(炊飯器でしっかり加圧調理する)
  • 皮を向いたカボチャ、じゃがいも(蒸すかゆでる)
きび類は炊飯器を使い、水分多めでしっかり炊くと柔らかくなり、うんちにそのまま出てくることがありません。

糖尿病、腫瘍などのため、炭水化物の摂取を控えたい場合は、GI値が比較的低い里芋、長芋、玄米、そば(そばの実・十割蕎麦)などを使いましょう。食物繊維もきちんと補うようにします。脂肪の消化吸収に問題がなければ、代わりに脂質を使うこともできます。

脂質

肝臓は脂肪を燃やしてエネルギーに変えたり、脂肪酸や中性脂肪、コレステロール、リポタンパク質、リン脂質の代謝・合成・貯蔵・再分配を行なっています。肝臓で作られたコレステロールはステロイドホルモンや胆汁の合成に使われ、胆汁は脂肪の消化に重要な物質です。

このように、肝臓は脂質代謝にも深く関わっているため、肝胆疾患の症状がある時は、脂質の摂取量を減らし、肝臓の負担を減らすようにします。低脂肪の白身魚や鶏肉の利用がおすすめですが、抗炎症効果のあるオメガ3脂肪酸ビタミンEだけはきちんと補うようにしましょう。落ち着いたら脂質を少しずつ増やしていくことができます。

軽度の肝胆障害で症状がない場合は、特に脂質を控える必要はありません。必要量のリノール酸と抗炎症量のオメガ3脂肪酸ビタミンEをきちんと補うようにしましょう。

必ず投与

  • オメガ3脂肪酸DHAEPA):猫1頭あたり100〜150 mg・犬は体重5 kg あたり100〜100 mg
  • ビタミンE猫・小型犬 25〜50 IU・中型犬 50〜100 IU・大型犬100 IU〜

低脂肪食が勧められる場合

  • 猫の肝リピドーシス
  • 胆汁うっ滞・胆道閉塞
  • 重度の門脈体循環シャント
  • コレステロール値・中性脂肪値(TG)が上昇
  • 膵炎、膵外分泌不全、高脂血症などの既往や素因がある
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