獣医師による手作り食・自然療法ガイド

膵炎の食事療法

膵炎の食事療法はいたってシンプル。膵炎の引き金になりやすい脂肪膵炎を起こしやすい体質を作る炭水化物をできるだけカットします。脂質は犬で10〜15%未満、猫で15〜25%未満に抑えることが理想的ですが、とくに計算する必要はありません。低脂肪の肉や魚を主食にすれば、必ずこの範囲に収まります。

膵炎を起こしやすいのは炭水化物の摂りすぎでインスリン抵抗性を起こし、隠れメタボ状態になっている犬猫です。

また、1回の食事量を減らして1日の食事回数を多くすること、毎食の脂質量を急激に変えないことも症状の軽減や再発の予防に役立ちます。

主食(肉・魚)

低脂肪の肉や魚を利用しましょう。

100 g あたり 脂質 カロリー タンパク質量
鶏胸肉・皮なし 1.9% 110〜120 kcal 23〜24 g
鶏ささみ 0.8〜1.1% 100〜115 kcal 23〜25 g
ヤギ赤肉 1.5% 107 kcal 22 g
馬赤肉 2.5% 110 kcal 20 g
鹿赤肉 1.5〜5.2% 110〜147 kcal 22〜23 g
七面鳥胸肉・皮なし 0.7% 106 kcal 24 g
カンガルー赤肉 0.8〜0.9% 90〜95 kcal 20〜21 g
タラ(真鱈)・キス 0.2% 80 kcal 18 g
まぐろ・めばち赤身 0.4〜4.8% 95〜150 kcal 22〜26 g
かじき 0.1〜7.6% 100〜150 kcal 20〜23 g
ちか・とびうお・わかさぎ 0.6〜1.7% 77〜96 kcal 14〜21 g
かれい・さより・ひらめ 1.3〜2.0% 95〜103 kcal 18〜20 g
天然あゆ 2.4% 100 kcal 18 g
すずき 4.2% 123 kcal 20 g

は胃腸を温めて消化吸収をサポートする食材です。
は消化器系の熱(炎症)を冷ます作用があるため急性期に限定しましょう。
海外在住の方は、エミュー、エルク、バッファロー赤肉、リング、ポロック、ハドック、マヒマヒ、ホワイティングなども超低脂肪です。

100 g あたり 脂質 カロリー タンパク質量
うさぎ赤肉 6.3% 146 kcal 20 g
鶏もも肉・皮なし 4.8〜5.0% 130〜140 kcal 19〜22 g
かつお 0.5〜6.2% 114〜165 kcal 25〜26 g
あじ類 4〜9% 120〜170 kcal 18〜24 g
紅鮭 5% 138 kcal 22.5 g
鯛類 4〜8% 110〜150 kcal 18〜20 g
ます類 5〜10% 130〜190 kcal 20〜22 g

は胃腸を温めて消化吸収をサポートする食材です。
は消化器系の熱(炎症)を冷ます作用があるため急性期に限定しましょう。

基本的なルール

  • 超低脂肪の肉や魚でもサシや霜降りが入ると脂質量が高くなるので注意しましょう。
  • 皮を取り除くと脂質量を減らすことができます。
  • 若い家畜・魚の方が脂肪が少なくなります。
  • 穀物で育てた家畜より牧草で育てた家畜の方が脂肪が少なく、脂肪の質もよくなります(鶏・七面鳥を除く)。
  • 魚は養殖より天然物の方が脂肪が少なくなります。
  • 骨髄は脂肪が豊富です。骨を与える場合は骨髄が少ないものを選びましょう。
  • 牛肉・豚肉・ラム肉・鴨肉は一般的に脂肪分が非常に多いのでおすすめしていませんが、脂肪が入り込んでいない赤肉を探せば脂質はかなり低くなります。製品ラベルで確認できれば安心です。
  • 食品中の脂質量は、産地、季節、製造元などさまざまな因子に影響されます。手作り食では、すべてを完全にコントロールするのは不可能だということを知っておきましょう。特定の食品の平均的な脂質量が知りたい場合は製品ラベルか文部科学省の食品データベースでチェックできます。

急性期には・・・

  • まずは超低脂肪の肉・魚で必要なカロリーとタンパク質を補給。猫の場合は、犬ほど脂肪分を制限する必要はありません。低脂肪または超低脂肪の肉・魚から選びましょう。
  • 胃腸・肝胆系にも炎症が及び、殺菌能力が弱っていることが多くなっています。生ではなく軽くゆでるか蒸してあげましょう。
  • 流動食が必要な場合は、調理後にゆで汁と一緒にミキサーにかけます。フィーディングチューブが詰まらないよう水の量を加減して濃さを調節しましょう。
  • 状態が改善してきたら、超低脂肪の肉・魚を使ったまま、野菜や内臓肉、ビタミン・ミネラルなどのサプリメントを足していきましょう。
  • 犬で超低脂肪の肉や魚を使っても膵炎の症状を抑えることができない場合は一部をGI値の低い炭水化物食品で置き換えてみましょう。
犬も猫も発症から1〜3日以内に食事の給与を開始する必要があります。食欲がまったくない場合は入院して栄養チューブの設置が必要です。


慢性期には・・・

  • 超低脂肪の肉・魚からはじめ、調子がよければ低脂肪の肉・魚を少しずつ足していきましょう。
  • 肝臓や胆嚢、腸の炎症を起こしていない場合は、生食でも大丈夫です。生ものを与える際の注意点を守り、温めてから与えましょう。
  • 野菜、内臓肉、サプリメントを使い、必要なビタミンやミネラルを必ず補うようにしましょう。
  • 栄養の偏りを防ぐためには複数の種類の主食を利用することがおすすめですが、食事ごとに脂質量が上下するのも避けたいところです。複数の食材をあらかじめ混ぜて、均等に分割するといいでしょう。
  • カルシウム
  • ヨウ素
  • オメガ3脂肪酸
  • タウリン(猫のみ)
  • 内臓肉:レバー・マメは比較的低脂肪(3〜6.5%)。この2種類を体重1 kg あたり1日 1 gずつ食事に混ぜれば上記以外のビタミン・ミネラル剤は必要ありません。内臓肉を与えられない場合は栄養計算機で必要な栄養素の量を確認し、ちょうどいいサプリメントを探しましょう。
必要量はそれぞれのリンクをクリックしてね


タンパク質の制限が必要な場合

超低タンパク質の肉魚を利用しても膵炎の症状を抑えられない場合やタンパク質量の制限が必要な病気を併発している場合は次を目安にしましょう。


三重炎が疑われる場合

膵炎・肝炎(肝胆管炎)・腸炎が併発している場合は食物アレルギーが関与していることがあります。今まで与えたことのない食品を選ぶと回復が早くなることがあります。

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